半導体 最後の賭け#3Photo:Bloomberg/gettyimages

国内のパワー半導体産業は、日本のお家芸である自動車やロボットなどの部品として使われ、高い世界シェアを誇ってきた。だが、三菱電機や東芝といった日系パワー半導体メーカーに「三つの凋落危機」が迫っている。特集『半導体 最後の賭け』の#3では、半導体メーカーが抱える価格競争力の低下や新技術の出遅れといったリスク要因に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

欧米に次世代半導体の市場争奪戦で負け
中国に追い抜かれる「三つの衰退要因」

「演算処理などを行うロジック半導体は一握りの天才が開発をリードする“花形”の分野だ。一方、パワー半導体は“地味”だが、チームプレイで改善していく職人芸の世界で、日本の国民性と相性がいい」

 パワー半導体メーカーの関係者はこのように解説する。

 実際、1980年代に世界シェア50%超を握り、栄華を極めた日本の半導体メーカーが凋落する中で、日系パワー半導体メーカーはしぶとくシェアを維持してきた。

 パワー半導体は電気を流す・止めるというスイッチの機能を果たしたり、交流の電気を直流にしたりする。いわば、モーターを動かす「筋肉」の役割をする半導体で、これがなければ機械を動かすことができない重要物資である。

 このキーデバイスを製造していることが強みとなり、それを搭載している自動車や家電、ロボットといった“最終製品”の産業発展に貢献してきたことは間違いない。

 しかし足元では、日本のパワー半導体に「三つの凋落リスク」がひたひたと迫っている。

 次ページでは、半導体関係者への取材とデータにより、三つのリスクの正体に迫る。日本が半導体産業の「最後のとりで」であるパワー半導体で一発逆転を狙うには、どのような方策が望ましいのか。その処方箋とともに示す。