何度もむちゃをする人は
会社をつぶすことになる
――そうした厳しい環境下、経営トップとしてかじ取りをどう進めていくのでしょうか。
僕は常に会社がつぶれることを意識しながら経営しています。良いときでも悪いときでも常にそれを考えているんです。特に今年からは厳しい時代になるから、無理なチャレンジをしたらダメだと…。
とはいえ、経営者として何もしなければ、マーケットからはどんどんたたかれるし、社員の気が緩んでしまう。ここが難しい。何もしないわけにはいかないし、かといってやりすぎは禁物。僕ら経営陣としては、しっかりと脇を固めて、低重心で行く。伊藤忠の「か(稼ぐ)・け(削る)・ふ(防ぐ)」のうち、「防ぐ」、「削る」を徹底するのが方針です。いかに抑えて無理をしないかが大事です。
逆にこういうときこそチャンスだと言う人もいます。一代でのし上がった経営者はそう考えるかもしれません。でもそんな人でも1度、無理したからと言って、2度も3度もそういうことはしないんですよ。よく言われていることですが、織田信長は桶狭間の戦いで今川義元の大軍を打ち破ることに成功したけれど、2度とむちゃなことはしなかった。何度もむちゃする人は会社をつぶしますよ。
――総合商社にとって重要なビジネスである資源の価格はどうなっていくとみていますか。
価格は下がらないですよ。少なくとも今年(2023年)はまだ下がらないと、僕自身は判断しています。
財閥系商社と違い、当社は資源ビジネスの割合が低い。しかし、やめることはしません。我々は総合商社ですから、あらゆる分野に投資する方針です。
総合商社に選択と集中はないと考えています。総合商社が一度でも、ある分野から撤退してしまうと対面業界との付き合いがなくなって、情報が途絶えてしまう。だから我々から付き合いをやめるような分野はありません。資源ビジネスもやり続けます。