伊藤忠に入社して以来
大切にしている考えとは
――岡藤会長ご自身、入社から現在に至るまでで、仕事において常に大事にしていたことは何でしょうか。
とにかくどんなささいなことでも全力でやることです。
一つ事例を挙げましょう。
2010年の当社の会長と社長が主催する役員の新年会でのことです。
前年末に役員全員に対して「宿題」が出され、新年会の席上で、担当業界の経営を今後どうしていくべきかなどを発表させることになっていたのですが、とはいえ新年会ですから、宿題をシリアスなものと捉えている役員は少数でした。
しかし、僕はそうは思わず、真剣に準備をして考えたことを発表しました。
会長と社長が僕のスピーチを聞いた後、顔を見合わせて「うん」と確認していたのを覚えています。
僕が社長就任したのはそれから4カ月後の2010年4月のこと。
「新年会のあの時、岡藤を社長にしようと確認した」と後で聞きました。
もし僕が準備もしないでスピーチをしていたら、どうなっていたでしょうか。
どんなときでも絶対に手を抜いたらいけない。ちょっとしたことでも一生懸命やると、それが積み重なって信頼になる。
それと、僕個人は新入社員の頃から仕事で疑問に思ったことがあれば、考えて、自分なりに答えを出していました。
仕事をしていたら、常に壁にぶち当たるわけです。たとえば「同じことをいつも繰り返していいんだろうか」と。
そこから、会社全体のあるべき姿について考えたり、商社ビジネスを続けるためにはどうすればいいのかとも考えました。
――新入社員の頃は苦労もあったわけですね。
誰でも苦労はするんです。僕もブランドビジネスを始めてからも、壁にぶち当たりました。
「お客さんは僕を信用してブランドの契約をしてくれた。それなのにもし契約が切れてしまったら、どうなるんだろう…」「毎シーズン同じサンプルを持って、お客さんを訪ねて仕事をしていていいものなのか」
そんなことを疑問に思うか思わないかです。そして、疑問に思ったことがあれば、考えて考えて、自分なりに答えを出さなければいけない。それが商社の仕事を考える、会社全体のことを考えることにつながる。新入社員の時から全体を考えることが大切なんです。
――若い社員にはそういうことを伝えたいと思っているのですね。