大相続時代到来で125兆円が日本中を移動!最も流出が激しい都道府県は?Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 年間死亡数が140万人を超える「大相続時代」を迎え、日本の家計資産の世代間移転が加速している。親世代と子世代の居住地域が異なれば、資産の移動も地域をまたいだものとなる。本稿では、今後30年程度の間に、どの地域からどの地域にどれぐらいの額の家計金融資産が移動するのかを試算し、この移動によって、日本の家計金融資産の地域分布がどう変化するのかを予想した。併せて、相続発生時の家計資産の行方についての都道府県別分析も行った。

相続の発生に伴い資産の地域間移動が多発

 日本の少子高齢・人口減少社会も後半戦に入り、死亡数の増加局面が続いている。年間死亡数は、現在の144万人からピーク時2040年には168万人となる見込みである。

 とりわけ、相続の発生につながりやすい高齢者の死亡数は、長寿化の進展や団塊世代の死亡時期が近づくことなどから、死亡総数を上回るスピードで増加し、現在の131万人からピーク時には160万人弱に達するとみられる。「大相続時代」の到来である。

 相続の市場規模には、「資産保有者の死亡」という不確定要素が絡んでいる。そのため予測は難しいが、いくつかの統計をもとに試算したところ、今後30年程度の間に相続される見込みの家計金融資産は650兆円弱という結果が得られた。

 さて、相続の際に、資産を残す側である親と受け取る側である子・孫の居住地域が異なれば、地域をまたいだ資産移動が発生し、家計資産の地域分布に変化をもたらす。近年は、この「相続による家計資産の地域間移動」が多発している。とりわけ、「地方に住む親と三大都市圏に住む子」という組み合わせが多い。

 日本では、1960年代~70年代前半にかけ、非大都市圏(地方)から三大都市圏への転入ラッシュが起きた(図表1(1)~(3))。高度経済成長期の集団就職者を中心に、15年間で合計1,700万人以上が転入、なかでも東京圏1都3県は、980万人という大量の転入者を迎え入れた。

 およそ15年にわたる転入ラッシュは高度経済成長とともに終了したが、その後も東京圏だけは、地方から毎年50万人前後の人口流入が90年ごろまで続いた(図表1(4))。「地方に住む親と三大都市圏に住む子」の組み合わせが多いのは、基本的には高度経済成長期の大規模な人口流入の名残だが、東京圏については、大学数や就業機会の多さによる継続的な流入にも起因しているといえる。