樹木たち同士のコミュニケーションを成立させる「地中の菌類ネットワーク」を解明した新刊マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険──。日本では養老孟司氏、隈研吾氏、斎藤幸平氏らが絶賛のコメントを寄せ、アメリカでは早くも映画化が決定しているという。同書の訳者である三木直子さんに、この本の魅力を語ってもらった(聞き手/藤田 悠 構成/高関 進)。

著者本人による朗読を聞くと、
翻訳がしやすくなる

──今回、三木さんが『マザーツリー』を翻訳していて気づいた「文章のクセ」や「著者ならではの特徴」は何かありましたか?

三木直子(以下、三木):翻訳は一つの文章を虫眼鏡で見るような作業ですから、ただ読んでいるだけでは気がつかないことまで気がついてしまうことがあります。

すごく生意気な言い方かもしれませんが、「やっぱり処女作だな」と感じるような荒削りな部分は残っているように思いましたね。もともとが研究者なわけですから、物書きとしてすごく熟達している方というわけではないんです。

ですが、「私には伝えるべきことがあるんだ!」という信念というか、居ても立ってもいられないような衝動に突き動かされて書いているという印象は強く受けましたね。

──翻訳をしていくうえでは、そうした著者独自のクセをつかんだりするのが大事になりそうですね。何かコツがあったりするんでしょうか?

三木:著者本人が朗読した原作のオーディオブックを参考にしました。とくに著者がみずから読み上げているものを聞くと、「こういうつもりで書いているんだな」という気持ちがわかるので、とても参考になるんです。書かれたものを翻訳するときには、本人の声や話すときのトーンなどを動画やオーディオブックで確認したりすると、日本語の文体をつくっていくときの参考になります。

本人の朗読を聞いたときの印象がまさにそうだったんですが、そこで感じたのは「著者のスザンヌはすごく男の子っぽい女の子だったんだろうな」ということですね。

ですから、本文中の会話文でもとくに「女言葉」を使わないようにしました。彼女の声や話し方を聞いたあとだと、女言葉を使った訳文はすごく不自然になってしまうんですね。

名称はわからなくても大丈夫。
木々や菌類たちの「会話」を楽しもう

──訳していくなかで、ほかに苦労されたところはほかにありますか?

三木:やっぱり専門用語ですね。とくに植物と菌類の名称です。

北米にはあるけれど日本にはない植物とか菌類には当然、和名がないんです。専門書を何冊か見たり、ネットで検索もしながら訳しましたが、専門家によって書いてあることが違うのでなかなか判断しようがない部分もありました。

これは最終的に、三重大学の松田陽介先生(生物資源学部)にもお知恵を拝借しました。

最初はいろんな木の名前が出てきて混乱するかもしれませんが、要するに「違う木同士が会話をしている」といったことを押さえていただければ、専門家ではない一般読者にも十分楽しんでいただけるのかなと思います。

(インタビューおわり)

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