地政学リスクへの対応
LCAは、マテリアル資源政策とも密接に関係する。資源の偏在、資源の他地域への依存は、国家安全保障上リスクとなり、LCAがその対応に寄与するからである。
ライフサイクルの、特に下流から静脈流におけるLCAをよくするためには、域内での資源循環構造が有効である。環境負荷の小さいリサイクル材の活用促進のために、生産し消費された後、都市鉱山から資源供給される「地産地消」の構造をつくり出すことで、LCAがよくなると同時に、今後資源需給が逼迫してくるフェーズでは域内で循環できる割合が上昇し、資源安全保障上有利となる。
そのためには、まずは生産を誘致し、消費を喚起する必要がある。域内で資源を消費し、製品を大量生産することで、その後十分な資源が域内に確保できたら、リサイクル率を高めて域内循環を促す規制や政策が効果を上げるからである。こうした、LCAで有利になるための企業誘致・産業誘致は、産業政策に直結する。
次に「データ」に関していうと、LCAは企業間でデータを連携することで、その測定と対応が可能となる。たとえば欧州では、これまでIndustry4.0などの産業・企業間連携の強化による産業全体の競争力向上を図ってきたが、LCAをユースケースの1つとしてデータ流通基盤の普及を図る。これにより「データ資源」を、分散型・連邦型ガバナンスのもとで域内流通させるデータ流通基盤により、テックジャイアントなどの域外企業によるデータの寡占から脱却し、価値あるデータ資源を域内にとどめるという観点で資源安全保障を強化する。
こうして各種政策はカップリングされてきており、企業は環境や産業対策を超えて、地政学リスクへの対応を図っていくという相互の関連性の観点でLCAを統合的に捉え、シナリオを想定する必要がある。