帰国後に仕事を引退するなら
海外の物件は「売却」がおすすめ
早速、試算を交えながらCさんの質問にお答えしていきます。ただ、相談文には帰国してからの生活費などの記載はありません。このため、家計収支の試算は推測を交えて回答することをご承知おきください。
Cさんの帰国は本決まりではなく、まだ検討段階とのことなので、実行に移すのは1年後の58歳とします。
帰国までの「ラスト1年間」の収支を見ていくと、月間支出は、記載のある25万~30万円の間をとって27.5万円とします。年間支出は330万円です。年収は手取りで500万円なので、差額の170万円を金融資産として積み増すことができます(資産については後ほど詳しく解説します)。
帰国後の試算は、Cさんの希望通り「フルリタイア」する前提で進めます。また、帰国後にマンションを購入するか、賃貸住宅で暮らすかについても迷っていると記載があるため、試算は購入・賃貸の両方のケースで行います。
まずは、マンション購入のケースからです。帰国後に住む場所や間取りをどうするかによって価格は大きく変わりますが、Cさんは独身であることから、現時点では家族向けの広めのマンションを購入する必要性は低いと思われます。そのため、マンション購入費用は手数料や諸経費込みで4000万円とします。
Cさんは不動産を除くと、現金900万円、投資商品が7500万円の合計8400万円を保有しています。海外での住まいは「持ち家」で、売却すればさらに資産を積み増せると書かれていることから、帰国を機に売却することにします。
海外の物件の「大家」として家賃収入を得るという選択肢もあるのですが、帰国後に仕事を引退する上では、少しでも金融資産を増やしておいた方が安心でしょう。
持ち家であるマンションは、経費差し引き後で約4000万円での売却が可能と書かれています。ただ、売却時に発生する税金を考慮していない可能性があるので、手取額は1割減の3600万円とします。
海外の物件を売った際の収入が3600万円、国内の物件を買った際の支出が4000万円なので、不動産取引の収支はマイナス400万円です。
現在の金融資産8400万円に「ラスト1年間」の貯金額である170万円を加え、そこから上記の400万円を除いた金額は8170万円です。この金額が、Cさんの帰国後の生活資金になります。
相談文には、Cさんが海外で年金に加入しており、67歳から毎月20万円を受給予定と書かれています。ただ、日本で公的年金を受給できるかは分かりません。
そこで今回は、日本の年金は受け取らず、海外の年金だけを受給する前提で試算を続けます。