加齢とともに支出を抑えないと
金融資産は尽きてしまう!?
帰国後は趣味などを楽しみたいと書かれていることから、月間支出は冒頭の27.5万円から3割ほど多い35万円、年間420万円とします。マンションをキャッシュで購入した場合も、共益費や修繕積立金を毎月支払う必要があるので、これらも支出に含めています。
Cさんはフルリタイアしているので、年収は0円です。年間支出の420万円がそのまま年間赤字額となり、年金受給が始まるまでの間は、毎年この金額を金融資産から取り崩すことになります。
取り崩し期間は9年間なので、420万円×9年間=3780万円が、保有する8170万円から引かれます。8170万円から3780万円を差し引いた残りは4390万円です。
ただ、この9年間に、家具・家電・パソコン・スマートフォンなどの購入や買い替えは必ず発生するでしょう。旅行も楽しみたいと書かれていたので、国内外に長期間出かけることもあるかもしれません。体調を崩して入院する可能性もゼロではありません。
そこで今回は、こうした「もしもの事態」に備えた予備費を500万円とし、前述の4390万円から差し引いておきます。その残額の3890万円が67歳時点の金融資産額です。
Cさんが67歳になると、月20万円、年間240万円の年金受給が始まります。手取額を200万円とする一方、年間支出は420万円のまま変わらないとすれば、年間赤字額は220万円です。
先ほど算出した金融資産額(3890万円)から220万円を毎年取り崩していくと、約17.7年後(Cさんが84歳ごろ)には底を突いてしまいます。人生100年時代には厳しいと言わざるを得ません。
対応策として、年を重ねるごとに支出額を減らすケースも考えてみます。Cさんが67~76歳の10年間は、月間支出を従来より5万円減の30万円、77歳以降はさらに5万円減額の25万円とします。
「合計で10万円も減額するの?」と思われるかもしれませんが、総務省が公表している家計調査報告によれば、高齢無職の単身世帯の月間平均支出額は13万円程度です(2021年実績)。月25万円に減らした場合も、Cさんの水準は平均より10万円以上高いことは知っておいてください。
さて、減額した支出額を基に試算を続けると、67歳からの10年間は、年間赤字額が先ほどの220万円から60万円(5万円×12カ月)少ない160万円に減少します。10年間の累積赤字額は1600万円です。
67歳時点の金融資産は3890万円なので、そこから1600万円を差し引いた2290万円が77歳時点の全財産です。
77歳以降、支出額はさらに月5万円(年60万円)の減額となるため、毎年の赤字額は160万円から100万円に縮小します。
77歳時点の金融資産額である2290万円から、毎年100万円を取り崩していくと22.9年後(Cさんが100歳になる直前)まで持ちます。人生100年時代への対応はギリギリといったところです。場合によっては、支出額をさらに減らし、平均値に近づけられるよう工夫することも必要かと思います。