ラテン語こそ世界最高の教養である――。超難関試験を突破し、東アジアで初めてロタ・ロマーナ(バチカン裁判所)の弁護士になったハン・ドンイル氏による「ラテン語の授業」が注目を集めている。同氏による世界的ベストセラー『教養としての「ラテン語の授業」――古代ローマに学ぶリベラルアーツの源流』(ハン・ドンイル著、本村凌二監訳、岡崎暢子訳)は、ラテン語という古い言葉を通して、歴史、哲学、宗教、文化、芸術、経済のルーツを解き明かしている。韓国では100刷を超えるロングセラーとなっており、「世界を見る視野が広くなった」「思考がより深くなった」と絶賛の声が集まっている。本稿では、本書より内容の一部を特別に公開する。

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生きづらい時代をどう生きるか?

 長引く景気の低迷と高い失業率、過酷な労働環境の中で、わが国の若者は恋愛や結婚、出産を諦め、不安な未来の中で余裕を失っています。これは中高年にもいえることです。理想の人生を歩むために自らをすり減らし、息もつけず感情を押し殺しています。だから誰かといるよりも一人の気楽さを好むようになります。

 若者たちと話していると、「一緒に」「ともに」ということに拒否感を覚えるほど疲れ果てていると感じます。金銭面でも、誰かと一緒にいてお金がかかることに負担を感じているようです。

 近頃よく耳にする「各自図生(自分の人生は自分で何とかするしかない)」という言葉が、不公平な今の時代を生き抜く最善の策であるかのように語られるのは、“おひとりさま”を選ぶしかないという矛盾した現実を表しているようです。

「一緒に、ともに」行うことを楽しみなさいと強要したいわけではありません。しかし、「一緒に、ともに」の価値が失われてはいけないと思います。

 一人で食事をして一人でお酒を飲み、一人で映画を見て一人で旅行に行くことを好んだとしても、「一緒に、ともに」行うことを面倒に思わないでほしいのです。

 誰かと「一緒に、ともに」やっていこうという温かい心を持ち、周囲への関心も持ち続けてください。そうすれば人生は今の何十倍もよくなる……とは言えないまでも、少なくとも悪くはならないでしょう。

 いいえ、今より少しくらいよくなるはずです。では最後に、次の問いかけをさせてください。

 あなたは相手の無事を望んでいますか。
 私たちの社会は隣人の無事を望んでいますか。
 あなたの無事は、私、そして皆の無事でもありませんか。
 私たちの社会に蔓延しているこの苦しみは、誰が止められるのでしょうか。
 その答えを私たちは知っていながらも、解決しようという努力すらしていないのではありませんか。

(本原稿は、ハン・ドンイル著『教養としての「ラテン語の授業」――古代ローマに学ぶリベラルアーツの源流』を編集・抜粋したものです)