人材採用での解像度が低い求人
「コミュニケーション能力が高い人が欲しい」

 解像度が高いとはどういうことか、もう少し詳しく見ていきましょう。

「健康になりたい」という人にアドバイスする場合を例にとって考えてみます。様々な選択肢が思い浮かびます。食事制限かもしれませんし、運動かもしれません。すでに病気にかかっていれば、治療が必要かもしれません。「健康になりたい」というのはあまりにも漠然とした要望のため、答えに窮します。そこでまずはその人に質問をして、現状把握することが必要でしょう。

 話しているうちに、どうやらその人の言う「健康になりたい」というのは、「筋肉を付けたい」という要望であり、さらに「上腕二頭筋と上腕三頭筋を鍛えたい」ということが分かってきたとします。すると「そのためにはこの筋トレ」「筋トレと一緒にこのプロテインを飲む」「休息を2日間ちゃんと取る」「最初はこのトレーニングから始めて、1カ月後には発展的なトレーニングを試してみる」「もし1つ選ぶなら、この筋トレをするべき」と提案しやすくなるでしょう。

解像度が高い人解像度が高い人はこの図のように、相手が持つ課題を構造的に捉え、その課題に最も効果的な解決策を見つけ、提案することができる 拡大画像表示

 このように相手の持つ課題を、時間軸を考慮に入れながら、深く、広く、構造的に捉えて、その課題に最も効果的な解決策を提供できていることが、解像度が高い状態です。

 ビジネスの現場でも同様です。たとえば、人材採用では、「コミュニケーション能力が高い人が欲しい」という漠然とした求人を出すよりも、「現場で顧客のニーズを直接聞きながら、システムの要件をまとめられる人が欲しい」とするほうが、より最適な人材からの応募が期待できます。「自社が欲しい人材」や「コミュニケーション能力」というものを要素分解して、どこが重要かを提示できているのは、必要とする人材像や、そもそもなぜその人材が必要なのかという自社の課題の解像度が高いからこそです。

 逆に解像度が低い例を挙げてみましょう。「教育が問題だ」という主張はよく耳にします。しかし、これだけでは、教育システム全体を直せば良いのか、教科書を改善すれば良いのか、どういう解決策を取ればよいのか分からず、行動に移すことができません。「教育」という言葉の要素分解が不十分なために、解像度が低い、ぼんやりとした主張だと言えます。この主張をもとに対策などを考えてしまうと、ぼんやりとした中で意思決定をしなければならなくなり、的を射た対策はできなくなるでしょう。