選ばれるクスリ#17Photo:©Eggy Sayoga/gettyimages

不眠大国・日本における睡眠障害の治療薬のニーズは大きい。近年、旧来よりも依存性が低く副作用の少ない新薬が次々に登場しているが、実際に現場の医師から選ばれている薬は何か。特集『選ばれるクスリ』(全36回)の#17では、睡眠障害治療薬の処方患者数ランキングをお届けする(ダイヤモンド編集部 野村聖子)

依存性の高い薬からの転換は進んだ?
睡眠障害薬の処方患者数ランキング

 日本人の睡眠時間が他国と比較して短いことは周知の事実だ。2021年に全国に発売された、睡眠を助けるという機能性表示食品「ヤクルト1000」の大ヒットは、睡眠に悩む日本人が多いことの証明だろう。

「睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版」(じほう)では、睡眠薬の処方の前に睡眠時無呼吸症候群や甲状腺機能亢進症・低下症、うつなど原因疾患の特定はもちろん、生活習慣の改善といった睡眠衛生指導を行うよう推奨されているが、患者は眠れないことによる焦りでなおさら不眠になるという、負のスパイラルに陥りがちだ。

 精神科医で早稲田メンタルクリニックの益田裕介院長は、「まずは薬で眠れるようにしてあげると気持ちも楽になり、症状が改善する方も多い」と話す。

 睡眠障害の薬物療法では、伝統的にベンゾジアゼピン(BZ)系睡眠薬が主流だったが、依存性の観点から非BZ系薬へ、そして「ここ10年間で上市されたメラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬といった新薬に置き換えていこうというのが学術的なコンセンサスとなっている」(益田院長)。

 次ページでは、実際に睡眠障害に対する治療薬の処方患者数ランキングを公開する。ランキングは医療情報サービスを手掛けるメディカル・データ・ビジョン(MDV)とDeSCヘルスケアのデータを基に、ダイヤモンド編集部が作成したものだ。果たして学術的な推奨のとおり、新薬への切り替えは進んでいるのだろうか。