働く国を自分で選ぶ時代
「日本が選ばれなくなるのでは」
田原 首相在任中にできなかったこと、もっとやりたかったことは何でしょうか。インバウンドは、コロナ禍によって一時落ち込みましたが、これからまた増えるでしょうね。
菅 私たちは安倍政権の時に、「2030年までに、年間の訪日客を6000万人にする」という目標を掲げました。でも日本は当時、アジアの人たちのビザの取得がとても厳しかった。これだけの観光資源がありながら、彼らはなかなか日本に来ることができなかったんです。
そこで、第2次安倍政権の時に、安倍総理から観光立国を宣言してもらいました。そのとりまとめをやらせていただいて、ビザを緩和したところ、おもしろいように訪日客が増加しました。
それまでは、ビザを緩和すると、不良外国人が増える、犯罪が増える、こういうことを言われていて誰もやってこなかったんです。でも世界は緩和の流れになっていた。それで、少なくともその流れと同じにしなければならないと考えました。
結果、インバウンドは840万人から3200万人と、約4倍に増やすことができました。犯罪も微減です。今まで何をやってきたのかと、動かなかった人たちによっぽど言ってやりたかったくらいでしたけど。
田原 あとやっぱりね、世界各国から見ると日本政府は、移民や難民の問題について、ちょっと冷たすぎるのではないかという批判がありますね。
菅 私は東日本大震災や熊本地震以降、外国の人が働く場として、日本を選ばなくなるのではないかという危惧をものすごく強く持っていたんですね。
そのような中、外国の人が技能研修よりも長く就労することができる「特定技能」(※)という制度を新しくつくりました。出入国管理法を改正するなどして、外国人労働者の待遇や環境、そうしたものを良くした。今は、働く国を自分で選ぶ時代になっていると思っていて、そうしないと外国の人たちが日本に来てくれませんから。そんな危機感を持って取り組んできたと思ってます。
田原 今、円安なので、外国の人が日本に来て働きたくないのではないかと。すでに日本で働いてる人たちも出て行く人が増えていると耳にします。
菅 当然、そうした現象も起こると思います。こうした状況でも、外国の人が安全に働けるよう、(外国人労働者を受け入れるための)環境の改善を推し進めておく。日本がきちんと門戸を開いて、外国の人に親切に接する。もちろん、円安の対応も必要ですが、環境の整備や仕組みづくりにおいてもまだまだやれる可能性はあると思っています。
田原 そこなんですよ。外国の人に積極的に門戸を開く。菅さんにはこれができるので、本当に頑張っていただきたい。
菅 これは、皆、頑張ると思いますよ。
田原 岸田さんはそのへんの度胸が、いまひとつ足りないと思うんです。
菅 いやいや、そんなことはないと思います。
菅義偉が今後成し遂げたいこと
若い人へ伝えたいこと
田原 歴代総理の中で、菅さんは金をめぐるスキャンダルめいたものは一切なかった。こういう総理は珍しいですね。あらためて今後、日本に何を期待して、菅さん自身、何を成し遂げたいですか?
菅 そうですね、先ほどから申し上げている、グリーン&デジタル。これをしっかり前に進め、成長させていく。こうしたことができると思ってます。
田原 若い世代に何か伝えたいことはありますか?
菅 若い世代には、未来に希望を持って生きてほしいですね。
田原 「希望を持つ」とはどういうことですか? 僕が若い世代について、一番の問題と思っているのは、安定を求めすぎているのではないかということです。
菅 それは前から言われてますね。もちろん安定も大事だと思いますけど、「自分が何をやりたいのか」を徹底して考えてみる。そのような時期があってもいいのではないかと思います。
田原 何をやりたいのか、そこですね。そして未来に希望を持つ。これらを本当に声を大にして、政治家から若い世代へ言ってもらいたいですね。よろしくお願いします。これからも頑張ってください。