「健康と季節性うつの線引きをどこでするのか?という境界線がはっきりしないこともあります。一応、SPAQ(=Seasonal Pattern Assessment Questionnaire)というチェックテストはありますが、あくまで目安です。発症する人の割合についても、地域によってばらつきがあるとされています。ある調査では、欧米で1~10%、日本では2.1%の人々が季節性うつの可能性があると報告されていますが、自身が季節性うつだと自覚的でない人をカウントできていない可能性も高く、どうしても曖昧な数字と言わざるを得ません」
とはいえ、研究が進んできた結果、判明したことも多い。20代前半、女性(男性の3~4倍)、緯度の高い北国に住む人が、季節性うつの傾向が高いといわれている。また、冬に気分が落ち込む要因が目に入る“光”の量にあると、最近の研究で分かってきたという。
「“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンの減少が、人を憂うつな気分にさせてしまうことが分かってきました。冬の弱い日差しでは、脳内に分泌される『セロトニン』の量が減ってしまうのです。つまり、光に対する感受性が強い体質の人ほど激しく気分が落ち込んでしまい、季節性うつになりやすいと言えます」
冬だけでなく梅雨頃に季節性うつにかかる人もいる。そのため、気温や湿度、時間が主な要因ではなく、日照量が大きく関係していることは間違いないそうだ。また、季節性うつ特有の症状である「過食」に関しても、セロトニンが関係しているという。
「甘いものを食べると、脳内でセロトニンの分泌量が増えるのです。不足しているセロトニンを補給するために、甘いものを無性に欲しがってしまうんですね。セロトニンは翌日に持ち越すことができないので、太陽の光をしっかりと浴びることができないと、その日の気分や甘いものを食べたいという衝動をコントロールできなくなってしまうのです」
「過眠」に関しては、“ダークホルモン”と呼ばれる「メラトニン」というホルモンが影響している。
「メラトニンは、私たちを眠りへ導く働きをするホルモンです。メラトニンの分泌は、朝、目に光が入ることで分泌が止まり、13~15時間後に再び分泌されて、私たちを眠りに誘うのです。メラトニンの分泌に影響を与えるためには、2500ルクス以上の明るさが必要です。電灯では1000ルクス程度なので、日光をしっかり目に入れないと睡眠のリズムが崩れてしまいます」
季節性うつ改善に効果的な
“モーニング”の習慣
自分は季節性うつかもしれない、と心当たりのある人はどのように対応すればよいのだろう。
「朝、太陽光を浴びて食事をしっかり取って、軽く運動する。結局のところ、朝起きて規則正しい生活に整えることが一番大切です」と加藤氏は語る。
「季節性うつの患者さんには、朝、喫茶店まで軽く歩いて、たまごサンドもしくは「食パン+ゆで卵」を食べることを勧めてますね(名古屋のモーニングでは、食パン+ゆで卵+コーヒーの組み合わせが多い)。生活に取り入れてくれた方のほとんどは、『毎年冬は調子が良くないけど、モーニングを習慣付けたら良くなった』と言ってくれます。朝の散歩が習慣になるので、犬を飼ったという人もいましたね」