当時、最強だった「モンゴル帝国」を日本が追い返せた理由

 なぜ、多くの国を征服した元が、日本を攻略できなかったのか。その理由が最近の研究からわかってきました。

 元軍がユーラシア大陸を広範囲にわたって征服することができたのは、モンゴルの遊牧騎馬民族による騎馬戦が非常に強かったからです。そのため、元軍は日本を攻める際にも馬を連れて行ったと考えられます。

 しかし、馬は狭い場所と揺れがとても苦手な生き物です。輸送というストレスがかかる条件下では発熱してしまい(輸送熱と言います)、それが長時間続くと死に至ることさえあります。現代の馬運車でもこまめに駐車して休憩を入れるほどです。現代よりも時間がかかり、休憩もない元軍の船では多くの馬たちが死んでしまったと考えられます。

 さらに、この元寇に使う船をつくったのは朝鮮半島の高麗の人々でした。元は完成を急かしたうえに、費用は高麗持ちというひどい条件を突きつけたため、高麗の人々は、早く安くつくれる「高麗式」の船をつくったそうです。

 元や中国の船の底がV字型である一方、高麗の船は底が平らでした。しかし、底が平らな船はV字型のように波を切れず、波に乗るかたちになるため、非常に揺れが大きかったと考えられます。馬はもちろん、人間でさえも船酔いでろくに戦えない状況だったのではないでしょうか。

 また、日本も防塁を築くとともに河口に杭を打ち、河口から船が入れないように対策していたようです。そのため、元軍は小さな船に乗り換えたうえで、隠れる場所がない浜辺に上陸せざるを得ず、その間に日本軍は陸から弓で次々と相手を倒していったと考えられています。
(本原稿は、『東大生が教える戦争超全史』の内容を抜粋・編集したものです)

東大カルペ・ディエム
現役の東大生集団。貧困家庭で週3日アルバイトをしながら合格した東大生や地方公立高校で東大模試1位になった東大生など、多くの「逆転合格」をした現役東大生が集い、全国複数の学校でワークショップや講演会を実施している。年間1000人以上の生徒に学習指導を行う。著書に『東大生が教える戦争超全史』(ダイヤモンド社)などがある。