未来起点で目的を捉える
「バックキャスト思考」

 では、先行きの見えないこの時代で僕らがとるべき考え方とは何か?アメリカ合衆国の新時代の幕を開いた大統領、エイブラハム・リンカーンは次の言葉を遺している。

The best way to predict the future is to create it.
(未来を予測する最良の方法は、それを創り出すことにある)

 これが、見通しのきかない時代を生き抜く考え方のコンセプトだ。

 過去の延長線上に未来を見るのではなく、望む未来を最初に描くこと。その未来像から現在に立ち戻り、その実現に必要な手段を見つけ出すこと。これは言いかえれば、過去起点の「バックミラー思考」を抜け出し、未来起点の「バックキャスト思考」にシフトするということだ。時代は、この思考の転換を僕らに要請している。

不確実性の時代に必要な「バックキャスト思考」不確実性の時代に必要な「バックキャスト思考」。創出したい未来を実現する方法を逆算する「バックキャスト思考」が、VUCA時代には必要となってくる。 拡大画像表示

 さて、ここで最初の問いに戻ろう。

 いま、なぜ目的について考えるのか?

 それは、未来起点で物事を考えることが必須の時代にあって、目的は「未来像そのもの」だからだ。目指す先が定まっていればこそ、「そこまでどうやって行こうか」「実現には何が必要か」という逆算の創意がはたらき出す。

 逆に、果たすべき目的が何か分かっていなかったとしたら、どうか。

 目的が分からないと、目指す先が見えないまま前に進むことを強いられる。そのような状況にあるとき、人は「これまでどう進んできたか」と過去を参照する「バックミラー思考」に頼らざるを得なくなる。だが、その考え方はVUCA時代ではもはや無効となった。