「若い頃は、テストステロンが体中に充満しているので、どんなものを食べても、どんなトレーニングをしても筋肉は付きます。テストステロンがトレーニングと食事に対する体の反応を決定するため、このホルモンが減少している中高年は、高負荷のトレーニングをしても筋肉は付きにくいのです」
また、「高重量のトレーニングは、中高年にとってけがのリスクが非常に高くおすすめできない」とフィンク氏は話す。
「筋肉というのは負荷に『慣れやすい』ため、負荷をかけるために重量をどんどん重くするトレーニングを選択する人もいると思います。ただ、テストステロンがそもそも少なく筋肉の付きにくい中高年の場合は、けがのリスク、急な血圧上昇のリスクなどの観点を鑑みて、ウエートを軽くして休息時間を短くするトレーニング方法がもっとも適切と言えるでしょう」
適切な筋トレを行うことにより、血中のテストステロンやテストステロンの持つ遺伝子情報をターゲット細胞に伝えるテストステロンの受容体の数が増えて、さらに筋肉がつきやすくなるという好循環が生まれるのだそうだ。
では、「適切な筋トレ」かどうかの判断基準はどこにあるのだろうか。
「一番分かりやすい判断基準としては、血流が増えることで一時的に筋肉がパンパンに張る『パンプ感』があるかどうかです。筋肉が完全に回復する前にトレーニングを再開することで、生化学的ストレスが目的の部位に蓄積されて筋肉の成長につながるのです。この『パンプ感』の感覚は、もう一回も、おもりを上げられない限界まで追い込まないと、なかなか得られません。そのため、トレーニング全体の時間は短く集中的に取り組む必要がありますね」
まったく運動をしてこなかった人ほど、見た目の変化はより顕著に表れて「パンプ感」も実感しやすいのだそうだ。フィンク氏は、筋トレ初心者の初期段階を「ハネムーンフェーズ」と呼ぶ。
「初心者の方は、食事や睡眠など生活習慣を整えながら、腕立て伏せのような自体重を使った自重トレーニングを短い休憩時間で集中的に行うのが、一番取り組みやすいのではないでしょうか。負荷を高める方法としては、動作をゆっくりとすることがもっとも取り入れやすいと思います。腕立て伏せであれば、体を下げる動作を2秒から始めて、3秒、4秒と増やしていくとよいでしょう」
しかしながら、自宅での自重トレーニングはバリエーションが少ない。そのため継続が重要な筋トレにとっての大敵である「飽き」がきてしまう恐れがある。また、自分の体重だけでは筋肉への負荷にも限界がきてしまう。それゆえ、フィンク氏は「始めて数週間は自宅での自重トレーニングで体を慣らして、最終的にはジムに行きボディーメークを楽しむことを目標」とするように勧めている。