最優先すべきは正確な情報に触れ
信頼できる医師を選ぶこと
そして開設したのが「正直不妊治療」である。2022年5月にスタートし、反響は少しずつ増えている。
「今、ネットには不妊治療に関するさまざまな情報が飛び交っています。しかし、間違った内容が多いのも事実です。私自身、不正確な情報に翻弄された経験があるので、何よりも正確なコンテンツを掲載することを重視しています」
サイトには、不妊治療の費用をはじめ、助成金、治療法の種類と選び方など、不妊に関する詳細なコンテンツが掲載されている。
このサイトで収益を上げようとは考えていないそうだ。不妊に悩む夫婦・カップルに正しい情報を伝えるのが目的だと刀禰氏は断言する。コンテンツはすべて医師の吉村泰典氏が監修している。
「不妊治療にかかる費用を軽減できないか、とも考えています。保険適用になったとはいえ、すべての治療が保険適用になったわけでありません。高齢出産の方がそれなりの確率で子どもを授かるには、最低300万円近くはかかると見受けられます。誰もが簡単に払える額ではありません。少しでも負担を減らす方策を模索したいと考えています」
運営元のメンタルヘルステクノロジーズは、これまで企業のメンタルヘルス支援事業を行ってきたが、近年、人事部から不妊治療に関する相談を受けることが多くなったという。企業側も不妊治療への対応を講じている様子がうかがえる。
不妊治療が保険適用になったのは朗報だが、注意点もある。必ずしもすべての体外受精・顕微授精が保険適用ではない点だ。
たとえば、何度も人工授精を試みて不成功の場合、着床不全、不育症の治療は保険適用外となる。不育症の場合、流産を2回経験しないと、診療対象にならないという現実もある。さらに、受精卵の染色体異常を調べる「着床前診断(PGT)」も、治療費は全額自己負担となる。
ともあれ、不妊治療の経済的負担が大幅に軽減されたことは確かである。不妊に悩む方は、正しい情報を入手し、信頼できる医師にぜひ相談してほしい。
(監修/慶應義塾大学名誉教授・産婦人科医 吉村泰典)
(吉田由紀子/5時から作家塾(R))