関東と関西で異なる
鉄道事業の傾向

 最後に本業たる鉄道事業の今後を見てみたい。2020年度以降の四半期ごとの輸送人員をコロナ前と比較すると、明確な傾向があることが分かる。

 関東から東急、東武、関西から阪急、近鉄を抜粋して見てみると、いずれも感染拡大による波はあるが、基本的には通勤定期(近鉄は非公表)は横ばい、通学定期と定期外は回復基調で推移しており、輸送人員全体では各社とも9割前後まで回復している。

 しかし、その内訳を見ると地域ごとに異なる傾向がある。グラフで示した東急、東武を含む関東大手私鉄は定期外が定期を上回っているのに対し、関東以外の地域では定期、定期外ともに9割程度の阪急と阪神を例外として、定期が定期外を上回っている。特に、都市から地方まで広い営業エリアを有する近鉄や、関東、関西以外で営業する名古屋鉄道、西日本鉄道ではその傾向が強まる。

 これは関東ではテレワークなどの定着が進んでいるためと考えられるが、それ以外の地域は定期外利用の回復が関東より遅れているだけの可能性もある。第4四半期以降の動向を追っていきたい。

 もう一つ注目したいのが今年相次いで行われる運賃改定だ。東急(3月18日実施)は12.9%、近鉄(4月1日実施)は17%、南海(10月1日実施)は10%の改定率で上限運賃が変更される。これまで見てきたように、既に利用者は9割程度の水準まで回復している。

 収益性の改善を目的とした運賃改定に「取りすぎ」があってはならないが、今回の運賃改定はコロナ禍という未曽有の出来事の中、手探りで行われた。そのため運賃改定後3年間の総収入と総括原価の実績を確認し、必要に応じて見直すことになっている。来年度以降は運賃改定の結果に注目したい。