「グローバルな不平等」研究の第一人者ブランコ・ミラノビッチが“2035年の世界地図”を「やや楽観視」する理由。グローバル化が持つ2つの基本的な力とは?『2035年の世界地図――失われる民主主義、破裂する資本主義 』
エマニュエル・トッド , マルクス・ガブリエル , ジャック・アタリ , ブランコ・ミラノビッチ(著)
定価935円
(朝日新聞出版)

 つまり、これは何も新しいことではありません。単に、より多くの物品やサービスに適用できるようになった、ということです。まさに、過去には存在せず、適用できなかったようなサービスです。

「権威主義的な政権がグローバル化を利用する可能性がある」という意見は大変興味深いことではありますが、権威主義体制は非常に脆弱でもあります。

 現在の制裁下にあるロシアの状況を見て、過去と比較すると、アフガニスタン侵攻の際に当時のソ連に対して制裁が科されたときを思い出します。ただ、当時の制裁は本当に最小限の影響しかありませんでした。それは、ソ連が孤立しており、世界経済に統合されていなかったからです。そして、世界経済自体も相互依存性がはるかに低かったのです。

 つまり、グローバル化がもたらす影響は双方向に働いています。権威主義体制もそのメリットを悪用できる一方、グローバル化が引き起こす変化に対してより脆弱になる可能性もあるのです。

ブランコ・ミラノビッチ
経済学者。
1953年生まれ。「エレファントカーブ」のモチーフによって先進国中間層の所得の伸び悩みを指摘し、所得分配と不平等に関する研究で世界的に知られている。世界銀行調査部の主任エコノミストを20年間務めた経験もある。主な著書に、『不平等について』『大不平等』『資本主義だけ残った』(みすず書房)など。

AERA dot.より転載