◇環境がおいしさを左右する

 行列ができているお店はおいしく感じてしまう。これには、「感情増幅効果」が関係している。他の人がいると、それだけで感情に強い効果が加わるということだ。イエール大学のエリカ・ブースビーの実験によると、おいしいものは1人で食べるよりも他の人がいるところで食べるほうが、「おいしい」という評価が出やすくなる。また、まずいものを食べたときも、他の人が周りにいるときのほうが「まずい」という評価が高まる。感情増幅効果はプラスにもマイナスにも働くということだ。たとえ直接のやりとりをしなくても、混んでいる人気店で食べると、何となくおいしく感じる。家族や友達と食べたほうが同じ料理でもおいしく感じるのもこのためだ。

 また、一緒に食べる人の行動も味の感じ方を左右する。デューク大学のロビン・タナーは、2人1組のペアに魚の形と動物の形をした2種類のクラッカーを試食させる実験を行った。ペアのうち1人は仕掛け人で、魚の形のクラッカーばかりを食べる。すると、ペアのもう1人も魚の形のクラッカーばかりを食べた。さらに、味の評価についても、多く食べた魚の形のクラッカーをおいしいと評価することが多かった。つまり、人は知らず知らずのうちに一緒にいる人の影響を受け、誰かがおいしそうに食べているのを見れば、おいしいと感じやすくなるのだ。

◆感情とお金の心理法則
◇打ち消し効果

 人は、相反する感情を同時に味わうことはできない。たとえば、怒りの感情がわいたら、それと反対の感情をぶつければ、怒りは消えてしまう。これを「打ち消し効果」という。

 ポツダム大学のバーバラ・クラーエは、実験参加者をわざとイライラさせた後、半数には椅子にきちんと座ってもらい、残り半数はリクライニングの椅子にリラックスした姿勢で座ってもらった。すると、体をくつろがせたグループのほうはイライラ感が減少した。

 日常生活や仕事でも心が穏やかではない場面に出くわしたら、意識的にくつろいだ姿勢をとるようにしよう。そうすれば、イライラが消えてくれるかもしれない。

◇お金はモチベーションの源泉

 モチベーションアップにもっとも役立つのは、当然のことながらお金だ。ミネソタ大学のキャサリン・ボーズは、実験参加者にバラバラのアルファベットを与えて、正しい単語をつくる作業を行わせる実験を行った。あるグループでは「MONEY」や「SALARY」といったお金に関連する単語をつくらせ、他のグループではお金にまったく関係ない単語をつくらせた。作業開始からギブアップまでの時間を調べたところ、お金に関係する単語をつくったグループのほうが粘り強く作業を行う結果となった。