岸田首相は薬価で耳タコの塩答弁…隙を突いて製薬業界に「急接近」する政党とはPhoto:Bloomberg/gettyimages
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 最近の岸田文雄首相は「聞く力」どころか「空気を読む力」も欠如しているらしい。

「日本初、世界初のイノベーションが、国境を越えて認知症の方とそのご家族に希望の光をもたらすことは、大変嬉しいこと」

 通常国会が開会した1月23日の施政方針演説。岸田首相は、まっすぐな瞳でエーザイの抗認知症薬「レケンビ」が米国で迅速承認を受けたことを讃えた。

 4月にも、▲3100億円に及ぶ中間年改定の大打撃が待ち受けている製薬業界にとっては「どの口が言うのか」(業界関係者)と呆れるほかない。しかもレケンビは日本ではまだ申請を出したばかりの段階だ。身内である自民党議員でさえ「こんなに薬価を下げられる日本では、エーザイも発売しないんじゃないのか」と、岸田首相の無邪気な発言に冷ややかな目を向けている。

 もっとも、こうした岸田首相の空気が読めない振る舞いも、不祥事が続く状況で必死の“空元気”だったのかもしれない。

 昨年末から、どうにも岸田政権の雲行きが怪しい。旧統一教会との関係が問題視された山際大志郎経済再生担当相を皮切りに、「死刑のハンコを押す地味な役職」発言の葉梨康弘法務相、政治資金問題が取り沙汰された寺田稔総務相、秋葉賢也復興相と、わずか2カ月余りで立て続けに4人の閣僚が辞任した。

 これらの「辞任ドミノ」と並行して持ち上がってきたのが、満を持して首相秘書官に起用した長男・翔太郎氏問題だ。フジテレビの女性記者にネタを漏らしたと報じられれば、酒癖の悪さや女子アナとの合コン三昧まで曝露された。年が明けても、翔太郎氏問題の炎上はとどまるところを知らない。目下、海外出張時の公用車での「観光」と「全閣僚へのお土産購入」を主な燃料に、延焼を続けている。

 問題はまだある。経済産業省出身の荒井勝喜首相秘書官の差別発言だ。オフレコの場ではあるものの、荒井氏は同性婚カップルに対して「見るのも嫌」などと放言。一応は荒井氏の更迭で落とし前をつけたかたちになっているが、差別発言から1週間経った今でも、国会の内外で非難の声は止んでいない状況だ。いったい次はどんなトラブルが巻き起こるのだろうか。