「運動しても痩せない」は科学的に当然だった!ダイエットの真の鍵は食事に写真はイメージです Photo:PIXTA

運動すれば痩せられる――。多くの人が信じているその考えは、根本的に間違っているという。「タイム」誌やBBC、ニューヨーク・タイムズで取り上げられ、大きな話題を呼んだダイエットの真実を紹介。私たちが痩せるために本当に取り組むべきこととは?※本稿は、ハーマン・ポンツァー/小巻靖子(訳)『運動しても痩せないのはなぜか:代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」』(草思社)の一部を抜粋・編集したものです。

運動しても痩せないのはなぜか

 私たちの代謝エンジンは1日のカロリー消費量を摂取量に、そして摂取量を消費量に合わせるよう見事に調整されている(カロリーの消費量を手に入れられる食物の量に合わせるのである)。1日のカロリー消費量の増加が一時的なものであっても、カロリーの摂取量はそれに合わせて増える。カロリーを余分に燃やせば、余分に食べるのだ。

 たとえば、1990年代後半にアメリカで行われた研究、ミッドウエスト・エクササイズ・トライアル1を見てみよう。

 これは活動レベルが低く体重過多の若い成人を対象にした研究で、被験者は無作為に運動グループと対照群に分けられた。運動グループは週に2000キロカロリーの消費(20マイル〈32キロメートル〉のランニングに相当)を目標に運動を16カ月続けた。1週間に2000キロカロリーで16カ月なら、体重は40ポンド(約20キロ)減るはずだ。

 ところが男性は10ポンド(約5キロ)の減少にとどまり、体重の減少が見られたのはほとんどの場合、最初の9カ月間だけだった。それ以降は、運動は続けていたが体重は減らなかった。それは気の毒だと思うなら、運動グループの女性を見てほしい。体重はまったく減らなかったのだ。指導を受けながら激しい運動を16カ月続けたのに、体重は実験初日と同じだった。16カ月間、何も運動をしなかった対照群の女性は2ポンド(1キロ)ほど太るケースが多かったので、多分、いくらかの慰めにはなっただろう。

 この結果に失望した研究者は、さらに激しい運動を盛り込んだミッドウエスト2を実施した。

 被験者は週に2000または3000キロカロリーを消費する運動を指導下で行うよう課された。これはたいへんな量で、体重150ポンド(約68キロ)の人が1週間に20マイル(約32キロメートル)、または30マイル(約48キロメートル)走るのに等しい。

 10カ月に及ぶこの研究に最後までついていけたのは被験者のわずか64%だった。おそらく運動がきつすぎたのだろう。この64%の人々の1日のカロリー消費量は平均220キロカロリー増えた。運動量からは285~430キロカロリーの増加が予想されていたが、それよりはるかに少ない。

 減量幅は平均約10ポンド(約5キロ)で、もっと運動量の少なかったミッドウエスト1の男性と変わらない。また、2000キロカロリーのグループと3000キロカロリーのグループを比較しても、減量幅の平均値に違いはなかった。運動しても減量効果はほとんどないことがここでも示された。