税制は労働力率に大きな影響を与える。とりわけ、配偶者控除が女性の労働力率にきわめて大きな影響を与える。税制度の設計にあたっては、将来の労働力不足問題を十分考慮に入れるべきだ。

 これまで日本では、「103万円の壁」ということが言われていた。配偶者の給与収入が103万円を超えれば、配偶者控除を受けることができなくなるので、労働時間を抑えて働いていた人が多かったのである。

 2018年の税制改正で、それまでの制度は変更された。配偶者の給与収入が103万円を超えても、150万円までなら配偶者控除と同額の配偶者特別控除を受けられ、201万5999円までであれば控除を段階的に受けられるようになったのである。

 この改正に対応して、人々は労働時間を増やした。しかし、増えたのは非正規雇用だ。そして、増えたとはいえ、非正規の労働時間は、正規労働者に比べれば短い。したがって、一人当たりの平均賃金は、むしろ低下することになってしまった。

 もともと、配偶者控除という制度は、「女性は専業主婦」という時代の名残だ。労働力が減少する社会において、このような制度が適当かどうかは、大いに疑問だ。こうした制度を変えなければ、女性の社会参加を本格的に増やすことはできないだろう。

 また、新しい技術やビジネスモデルを採用して生産性を引き上げ、労働力不足を補うことが可能だ。超高齢化社会に対応するには、こうした施策を進める必要がある。さらに、外国からの移民を認めることも必要だ。

雇用延長で対処できるか

 高齢者の労働力率は、これまでも上昇しつつある。また、年金支給開始年齢を65歳まで引き上げたことに対応して、政府は、65歳までの雇用を企業に求めている。今後、年金支給開始年齢を70歳に引き上げれば、70歳までの雇用延長を企業に求めることとなる可能性がある。

 しかし、ここには、大きな問題がある。それは、日本の賃金体系では、50歳代までは賃金が上昇するが、60歳代になると急激に減少することだ。

 組織から独立した形で高齢者が仕事をできるような仕組みを作る必要もあるだろう。単なる雇用延長だけでなく、こうした可能性をも含めた検討を進める必要がある。