自信のない私に心理学者が言ったこと
ここで、少し自己紹介をさせてください。
私はTBSテレビにアナウンサーとして入社、その後独立してフリーランスで活動したのちに、コミュニケーション塾を開き、アナウンサーや企業の経営者層にアドバイスをしたり、社会人になりたての方々に研修を行ったりしながら、60年以上ことばの世界に身を置いてきました。
なぜアナウンサーを目指したかといえば、女性として独立できる仕事に就きたかったからです。
そうして話す仕事を選んだものの、就職してからも難なくコミュニケーションをしている同僚に焦りを感じていました。辞めようと思ったことも一度ではありません。
あるとき、インタビュー番組が終わって出演者にお疲れさまでしたのあいさつをしたところ、その高名な心理学者に言われました。
「こんなことをしていたら、ダメになっちゃうよ」。
言い方は優しくてお父さんみたいでしたが、心にピシリと刺さりました。
かえりみれば、そのときの私はコミュニケーションの取り方や会話に自信を失っていて、どう考えたらよいのか迷いに迷っていました。
その原因のひとつに、当時はまだ女性のアナウンサーはメインのニュースを読ませてもらえなかったということがあります。男女ペアの司会では脇役にまわり、ニコニコ笑顔であいづちを打っていればよいという時代でした。
でも私は黙っていられなくて、意見を言ってしまい、せっかくのオーディションをふいにしたり、降板の憂き目に遭ったりしていたのです。そんな日々でしたので、このインタビュー番組でも、つい不安になり、予定台本通り無難にこなしました。
やはり、そこは心理学者。私のなかに自分の意見があることも見抜き、あえてはっきりとことばにして教えてくれたのだと、何十年もたった今でも忘れられない思い出です。
「第二のあいさつ」との出会い
「もう一度がんばってみよう」と思えたとき、周りの人達の会話に耳をすませるようにしたところ、あることに気が付いたのです。
皆から好かれている人は、ただ決まり文句の「おはよう」や「お久しぶり」だけでなく、必ずひとこと「風邪治った?」「資料作るの大変だったでしょう」と相手に寄り添う「自分のことば」を掛けていることに。