2023年は通信業界が4社体制になってから4年目に突入する。だが、“第4の事業者”である楽天グループの携帯電話事業は苦戦が続き、業界の「3強・1弱」の構図は完全に定着した。特集『総予測2023』の本稿では、今期も泥沼の赤字が続くことが確実な楽天の行方と通信業界への影響を予想する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
23年も5年連続の最終赤字へまっしぐら
波乱は楽天証券・楽天銀行IPOの“次”
2023年は、携帯電話事業の苦戦が続く楽天グループが、5年連続で最終赤字を喫する可能性が極めて高い。三木谷浩史会長兼社長は、営業赤字が続く携帯電話事業の「23年中の単月黒字化」を目指しているが、それも難しいだろう。三木谷氏が率いる楽天は、巨額の設備投資を強いられる通信事業の厳しさを23年も味わうことになりそうだ。
楽天は20年4月に本格的に携帯電話事業に参入。月額2980円の“格安料金”を引っ提げて携帯電話市場に殴り込みをかけたが、くしくも同年就任した菅義偉前首相の主導で、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が相次ぎ“楽天並み”の料金値下げに踏み切り、誤算が生じた。
22年の最大の転機は5月13日。同日午前の記者会見で三木谷氏は、契約者獲得の切り札にしていた「1GBまで0円プラン」の廃止を表明したのに続き、同日午後には決算説明会が開かれ「0円廃止」の質問が相次ぐ中で三木谷氏は「0円でずっと使われても、ぶっちゃけ困る」と放言。これ以降、0円を目当てに集まった契約者の解約が相次ぐことになった。
22年3月末に491万件まで積み上がった契約数は9月末で455万件に減少し、半年で7%のユーザーを失っている。携帯事業の本格参入から3年足らずで、まだまだユーザー数の拡大を図らなければならない時期に契約数を減らしたのは相当な痛手である。
楽天の財務悪化は著しい。携帯事業に必要な巨額の設備投資に伴う資金需要で有利子負債を膨らませており、資本増強も迫られる。すでに、グループの稼ぎ頭である金融事業の切り離しに乗り出しており、楽天証券ホールディングスと楽天銀行の上場をさせる方針だ。
正念場を迎える楽天の行方は、23年の通信業界の「台風の目」になるだろう。その行方は、楽天自力での資本増強か、または業界再編のうねりを起こすのか。次ページではその行方を大胆に予測してみよう。