マスク着用が「個々」の判断に委ねられ、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の位置づけが麻疹や風しん、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などと同じ5類へ変更される。「感染する/させる」機会が増え、診療現場の混乱は必至だ。せめて重症化の芽は摘んでおきたい。
重症化リスクの筆頭は、年齢と基礎疾患だ。年齢はいかんともし難いが、基礎疾患――糖尿病や脂質異常症、高血圧などの生活習慣病を患っている方は、治療薬を真面目に飲み、健康的な食生活と運動を心がけよう。
喫煙も重症化リスクだが、加熱式たばこの情報が少なかった。そこで大阪公立大学の研究者らは昨年2月、国内で発売されている加熱式たばことCOVID-19重症化リスクとの関連を調べている。
対象は日本の一般住民3万0130人(男性48.8%、平均年齢47.9歳)で、2020年と21年の感染状況および、喫煙の有無、ワクチン接種の有無、基礎疾患などについてデータを収集した。
回答者の24.3%が喫煙者で、そのうち21.2%が加熱式たばこ単独ユーザーであり、30.1%は紙巻きたばことのデュアルユーザーだった。
ワクチン接種などの影響を調整して解析した結果、非喫煙者と比べ、加熱式単独ユーザーの感染リスクは1.65倍、デュアルユーザーは4.66倍に跳ね上がった。
重症化との関連をみると、入院リスクについては、デュアルユーザーが3.17倍と高い一方、過去の喫煙歴や紙巻き単独、加熱式単独ユーザーでは関連が弱かった。
また紙巻き、加熱式に拘わらず全ての喫煙者は、人工呼吸器による酸素投与を必要とするリスクが高く、最もリスクが上昇したのは、ここでもデュアルユーザーだった。
研究者は「加熱式たばこ、特に紙巻きとの併用はCOVID-19の重症化と関連する」とし、喫煙行為を一考するよう勧めている。
5類移行後、果たして感染状況や医療の提供体制がどう変わるのか、政府や自治体の動きは予測がつかない。喫煙行動ひとつとっても「わが家の感染/重症化予防策」を慎重に考える覚悟が要る。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)