「もともと映画館は換気をしっかりと行うように興行場法で厳しく定められていて、映画の上映中にしゃべる人も極めて少ない。それでも、コロナのような感染症に対しては『危ない場所』と思われるお客様も多かったようで、休館明け直後はファミリー層とシニア層の来場者数ががくんと減ってしまいました」

 現在は、映画業界全体でコロナ対策のガイドラインも策定されており、例えばシアターからの退場時には、従業員による退場誘導で混雑緩和が図られている。

「映画館は比較的安全な施設であるとお客様の間で認知されてきたようで、10~20代の若者を中心に、映画館に人が戻ってきたと感じています」(佐々木氏)

 一般社団法人・日本映画製作者連盟の統計によると、ヒット作に恵まれた19年は2600億円を超える突出した数字をたたき出した“例外”の年だが、01年~18年までの日本の映画館全体の興行収入の平均は、約2100億円だった。そして、コロナ禍の20年は約1400億円、21年は約1600億円にまで減少した。

 だが、22年は2131億円と同統計で示されており、コロナ前の水準にまで回復している。

 日本の映画館が回復基調にある背景には、映画館側のコロナ対策による安心感の向上に加えて、日本独自のハイクオリティなアニメーション作品の人気に支えられたことも挙げられる。

 2020年の日本における映画館の興行収入は、前述の通り、全体で約1400億円だったが、その内、約400億円の興行収入を上げたのが『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』だった。

「新海監督の『君の名は。』のヒット以降、オリジナル長編アニメーション作品の予算も大きくなり、より質の高い作品が増えてきたと感じています。現在スラムダンクの映画が韓国で大ヒットしているように、日本のアニメーション作品は海外でも勝負できるクオリティといえるでしょう」(佐々木氏)