「努力する」と「工夫する」の違い

 そして、そのためには「努力ではなく、工夫ができる人」になるということが1つ重要な要素だと思っています。努力するのは大前提としてありながらも、自分の頭で考えて、試行錯誤しオリジナルの手法を見つけることが、確かな結果、成果につながるはずです。

「努力する」と「工夫する」の違いは、本質的な部分で、「勉強する」と「学ぶ」の違いに近いかもしれません。

 では、その違いの根本的なものは何かと言うと、まずは「目標」があるかどうか、ということです。

 教わったことをそのまま行うのは「勉強する」、自分で決めた目標があって、そのプロセスの中で得ていくのが「学ぶ」ということです。

「アセット(資産、財産)を得るために勉強する」という人が多いのですが、本当は「目標を目指して努力する中でアセットを得て、そのアセットをまた別の目標に対して活用する」ことこそ重要。その結果として、私たちは成長していけます。

 たとえば、「甲子園出場」を目指す球児がいるとします。

「自分が甲子園に行くためにはどうすればよいか?」と考え、ピッチングやバッティングを練習するから野球が効率よくうまくなるのだと思います。そうして得た技術こそ、その後の試合でも役立つようになる。

 一方、多くのビジネスパーソンは、まず「TOEICを勉強しよう」などと考えがちです。これは、前述の甲子園の例で言えば、(目標もなく)とりあえず「素振りをしよう」と頑張ることと同じようなもの。

「甲子園出場」といった高い目標に対して、どうすればそれを達成できるのか……と考えるプロセスこそが工夫です。

「とにかく素振りをしなさい」と言われて努力できるのは、「言われたことができる人」であって「工夫できる人」ではありません。

 経営者やマネジメント層、人事、またチームのメンバーからの目線で見たとき、どちらの人と一緒に働きたいかと言えば、間違いなく「工夫ができる人」です。

 もちろん、「言われたことができる人」は必要ですが、これは代替可能です。

 少なくてもビジネスの世界では「努力」よりも「工夫」に価値があるのは間違いありません。