アメリカで盛り上がる「たばこ排除」、背景に貧困の連鎖
2月、「愛煙家」の皆さんの心をかき乱すような海外ニュースがまた飛び込んできた。
米疾病対策センター(CDC)の最新世論調査によれば、米国の成人の半数以上が全たばこ製品の販売禁止に賛成しているというのだ。
新型コロナウィルスの感染拡大でバタバタと人が亡くなっていた時も、「マスクをするもしないも個人の問題だろ」とオレ流を貫く人も多かった「自由と自己責任の国」で、なぜここまで明確なタバコ排除の声が盛り上がっているのか。
「体に悪い」という医学的根拠もさることながら、多くのアメリカ人が問題視しているのが、「貧しい人の健康を損わせて、さらに貧しくさせてしまう」という「格差拡大」の恐れがあるからだ。
実はアメリカのタバコ市場の約3分の1を占めている「メンソールたばこ」は、アフリカ系アメリカ人や低所得者層の喫煙率が非常に高い。これは「たまたまこの層にハマった」からではない。あえてターゲットにされているのだ。
「たばこ製品、特にメンソールたばこについては、若者や人種的・民族的少数者、低所得層、性的少数者に向けて偏った宣伝が行われていることが、研究で示されている」(CNN.co.jp 23年2月3日)
また、この「メンソールたばこ」は多くの国で禁止されていることからもわかるように、一度吸ってしまうと、なかなかやめられないという高い中毒性がある。そこに加えて、未成年者が手を出しやすい。タバコは幼い頃から吸えば吸うほどヘビースモーカーになりやすいことがわかっているので、当然、健康を損なう人が増える。
ご存じのように、かの国は日本のように国民皆保険制度がないので、低所得者層が体を壊せば治療費でより貧しくなる。そして、そのような貧しい家庭の子どもが「かっこいい」とメンソールたばこに手を出して再び貧困へ…という感じで「貧困の連鎖」も指摘されている。つまり、アメリカでたばこ排除の動きが盛り上がっているのは、健康うんぬんもさることながら「格差問題」なのだ。