さらにADHDの診断を受けている子の中には「学年の区切り月直前に生まれた子が多い」という調査結果もあります。米国で行われた4~7歳の子ども40万人を対象に、8月生まれと9月生まれを比較する調査です(米国は9月が入学月なので、同じ学年内では最年長が9月生まれ、最年少が8月生まれとなります)。

 この調査により、8月生まれの子のほうが9月生まれの子よりもADHDと診断される率が34%も高いことがわかりました。この研究論文の執筆者のひとりは、「8月生まれの子は、過剰診断されている可能性がある」と主張しています。

 ADHDの診断に導かれやすい子は、学年内で生まれた月の遅い子に多いというこの調査結果は、米国のものですが、国内でも同様のことがいえるのではないでしょうか。

診断はときに「主観的」で、「流動的」なものである

 医師から発達障害の診断がくだると、親御さんの中にはショックを受けられる方もいらっしゃいます。

 ただ、ここであえてお伝えしたいのが、診断はときに主観的であり、流動的なものでもあるということです。つまり、一度診断がついたからといって「一生、この子は発達障害なんだ」「障害で、ずっと生きづらいんだ」と思う必要はありません。

 診断方法の在り方上いたしかたないのですが、診断にあたっての質問には、当事者である子どもではなく多くの場合、親など「周囲の人」が答えます。つまり質問への答えは、「まわりの人の主観」によって生み出されるものでもあるのです。

 たとえば、子どもが学校でさまざまな問題行動をしていると教師から指摘を受けてまいっているお母さんがいたとしましょう。「うちの子は、学校でダメな行動ばかりしている」というお母さんのフィルターを通して子どもを見ると、子どもの問題行動は普段よりさらに際立って見えることもあると思います。