できる人は相手に「無駄な時間」を取らせない
さまざまなエピソードを紹介しましたが、共通しているのは「相手に対して想像力を働かせて行動している」ということです。それによって相手に無駄な時間を取らせないのです。
例えば職場で上司から資料の準備を頼まれたとします。ただ用意して上司のデスクの上にそのまま置いておくのか、汚れないようにクリアファイルに入れてから置くのか。郵送するものであれば、封筒も用意するのか。考えるべきことはたくさんあります。
このように「言われずとも気づく」「相手の気持ちを想像できる」力を、私は「察知力」と呼んでいます。こうした察知力や想像力を磨くためのトレーニングとして、「なぜ?」「どうして?」という視点を持つことをおすすめします。
飛行機でのお客さまとの会話を例にすると、「今日は空席がありますか?」と質問されたとき、それに答えるだけでなく、「なぜ、このような質問をなさったのか?」と想像力を働かせてみます。普段から利用されていると思われるビジネスマンのお客さまなら「今日は満席でございますが、この後、お乗り継ぎがございますか?」。楽しい旅行でご利用だと想像されるお客さまなら「ご希望のお席ではなかったでしょうか?」などと、かける言葉も変えていきます。
こうやって質問を投げかけることによって、「空港から決まった時間のリムジンバスに乗りたいので、スムーズに移動したい」「窓側の席で富士山を見たい」など、お客さまの本当のご希望に近づくことができます。実はお客さまにとっては満席かどうかはさほど重要でなく、一番の興味は「自分の希望がかなうかどうか」なのです。
このような視点を持つことで、相手が「本当はどうしてほしいか」と考えられるようになります。そして、相手の求める本質的な解答に近づくことも、余計な時間を取らせない配慮につながるのです。