自分の言葉で書かれていない
ESは見抜かれる

 さらに、ESでも同じことが言えます。私はよく「代筆ES」と呼んでいますが、ESを文章の上手な友人や社会人に代筆してもらう人がいます。しかし採用担当者が実際に会えば、その人が書いたものでないことはすぐに露呈します。その人の経歴や年齢にそぐわない、こなれていない言葉、言い慣れていない言葉、わかりにくい言葉があるからです。文章だけ見て、本人が書いたものではないとわかる場合も多々あります。
 
 以前こんなことがありました。就活ワークショップで講師を務めたときに、文章を書く仕事をしている父親に書いてもらった学生のESを見て、年齢や経験にそぐわない言葉遣いから、すぐに代筆だと気づきました。私も仕事柄、ある程度の数のESを読んでいるので、すぐに判別できてしまいました。

 それでその学生に「これはあなたが書いたのではないでしょう?」と指摘したら、とても驚かれました。その後、彼女は自分の言葉で自分の経験をESに書き、無事に第一志望の企業に就職を果たしました。後日、父親から「あのまま自分が代筆したESを出していたら、決して内定できなかっただろう」と、わざわざ連絡いただいたのを覚えています。下手でも自分の言葉で書くことが重要です。
 
 なお、ESで選考に通りやすい文章と、一般的にうまいと言われる文章には違いがあります。一般的には起承転結がある文章が読みやすく、規範的だと言われていますが、ESの場合は最初に結論や言いたいことが書かれている必要があります。

 それはなぜか。面接官や採用担当者はおびただしい数のESを読まなくてはなりません。彼らは、次のプロセスにその人を通すためには「なぜ通すのか」という「理由」を明確にしなければなりません。ESの冒頭にその「理由」が書かれていれば、選考する側としては短時間で判断しやすいです。

 つまり書く側としては、面接官の立場に立って、その人が次のステップに通すかどうかを数行で判断できるESを書くことを心がけましょう。起承転結に沿って書かれたESの場合は、「書いた人がなぜその会社に入りたいか」「どのような人物であるのか」が「結」まで読まなければ判断しづらいため、不利になりがちです。

 筆記試験もESも、あなたの貴重な時間を考えれば、今の自分の実力で、今の自分をそのまま出すのが最も効率的だということが、おわかりいただけたのではないかと思います。

(ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD首都圏営業局 局長 福重敦士、構成/ライター 奥田由意)