「いい企画が思い付かない」と悩む人が多くいますが、そもそも「いい企画」というものは幻想に過ぎません。一般的に、人々が「いい企画」と口にするときは、「高確率で当たりそうな企画」や「絶対にバズりそうな企画」のことを指していると思います。

 確かに、そんな企画があれば誰だって「いい企画だ」と飛びつきたくなります。しかし、実際は企画の「当たる確率」と「バズるエネルギー」はトレードオフの関係にあります。

 なぜなら、「バズる」という現象は、企画の尖った部分が「人の狭くて深い感情にブッスリとハマる」ことにより生まれるものだからです。企画を尖らせれば尖らせるほど、感情の深い部分をズブッと刺すことができるので、そこから生まれる熱量も大きくなります。

 一方で、尖っている部分は特殊なカタチですから、そのカタチにカチっとハマる人は少ないので、結果として誰の感情にも刺さらないリスクも併せ持っています。当たる確率を高めようとする行為は、企画の尖った部分を丸くして、より多くの人に「嫌われなく」することです。

 これを「企画が丸くなる」と言います。自分の好みに合わない「尖った部分」は邪魔ですよね。丸い企画は多くの人に受け入れられる確率は高まりますが、感情の深い部分に刺さることはなくなってしまいます。

 さらにいうと、企画は実際に世に出してみるまで、当たるかどうかは分かりません。外れる確率を下げることはできますが、100発100中で企画を当てる方法はありません。もし、そんなことができるなら、私も今すぐ全財産を換金して、あらゆることを担保に借金をして、リスクヘッジなしで大儲けするでしょう。

 当たる企画を生むためには「いい企画ができない」と思い悩むのではなく、ひとつでも多く企画を世に出すことが大事です。尖った企画をたくさん出して、どれかひとつがズブッと突き刺さる人と出会う確率を上げていきます。ひとつの企画が誰かに刺さって、それが拡散されたとき、結果としてその企画が「いい企画」と評価されるようになるのです。最初から「いい企画」はありません。