反面、発達障害のステレオタイプは、「キャラ」としては立っています。うまく居場所を見つけられ、本人が自意識をこじらせなければ、ASDキャラ、アスペキャラは愛される存在になり得ます。だからこそ、漫画やアニメなどのフィクションにおいては、こうしたキャラが広く受け容れられているのです。ただ、そうした愛なるものが、珍獣扱いのような差別、偏見を強化するタイプの愛である可能性については指摘しておく必要がありそうです。
自傷的自己愛者(自己否定的な言葉を発しつつも、背景には自分への強い関心があることから、逆説的に自己愛が強いと思われる人々)もまた、このレッテルを自分自身に応用することがあります。つまり「自分がダメなのは発達障害のせいで、この病気は先天性の脳機能障害だから一生治ることはない。だから状況を変えるための努力はすべて無駄である」という理屈ですね。この理屈はもちろん間違いですし、この診断を持つ人すべてに対する偏見を強化してしまうという意味でも問題があるのですが。
陰謀論の蔓延には
“知的コンプレックス”も関与
トランプ大統領の時代以降、世間には「フェイクニュース」「ポストトゥルース」といった言葉があふれました。それはトランプ政権に限った話ではありません。コロナ禍にしてもロシアによるウクライナ侵攻にしても、常識や科学に反した主張を確信し、堂々と展開してみせる人は少なくありません。彼らは批判を受けるどころか、同様の主張をする仲間と連帯し、一定数の支持者すら集めています。これはどういうことなのでしょうか。
陰謀論にはまり込んで、そこから抜け出した経験がある人が語ってくれれば一番いいのですが、そういう人は決して多くありません。なにしろ陰謀論にはまったことがあるということ自体が恥ずかしいので、それについて語りたがらないのはむしろ当然のことでしょう。
そんな中で、Twitter上で貴重な証言を見つけました。これは俳優で依存症当事者としても活動している高知東生氏によるものでした。以下にいくつか引用してみます。
高知東生 @noborutakachi
言うのがとても恥ずかしんだけど、俺陰謀論を信じかけてたんだよ。仲間と話していて「高知さんの情報はすごく偏ってます」って言われて驚いた。Youtube って自分の見ている関連動画が次々出てくるようになっているだってな。そんなこと全然知らなかったから教えて貰わなかったら本当にやばかった。