「やっぱり日系企業でずっと仕事をしている人は使えない」――。先輩社員がツイッターで呟いた言葉にショックを受けた女性がいる。彼女はこの先輩に面と向かって「あなたの英語力だと最低限のコミュニケーションはできるけど、この先厳しいですよ」とも告げられた。この悔しさから英語を猛勉強。転職で成り上がってみせた。特集『一度覚えたら忘れない英語勉強法』(全16回)の#5では、ダイヤモンド編集部が独自に実施した「800人アンケート」で出世や転職にまつわる英語のリアルに迫った。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
「あなたの英語力だと、この先厳しい」
ツイッターで「使えない人」と追い打ち
「やっぱり日系企業でずっと仕事をしている人は使えない」
現在外資系メーカーに勤務する30代女性は日系企業に勤めていた3年前、先輩社員がツイッターで呟いた言葉がたまたま目に入り、大きなショックを受けた。「使えない人」というのは明らかに自分のことを指していたからだ。
当時は別の日系企業から転職したばかりで、この先輩社員と一緒に海外での研修に参加した。このときTOEICで820点だったので英語に対応できないわけではなかった。しかし、エリート街道を歩んできた先輩社員の英語力には到底及ばなかった。
先輩社員は面と向かって「あなたの英語力だと最低限のコミュニケーションはできるけれど、この先厳しいですよ」と告げてきた。確かにスピーキングに不自由なところがあった。この時点でかなり落ち込んだ。さらにツイッターの言葉が追い打ちとなった。
あまりの悔しさから、英語の猛勉強を始めた。原動力は感情的なものだったが、英語力を上げての転職も冷静に見据えていた。
TOEICの点数も欲しいが、何よりスピーキングの力を付けたかった。
まず通学型のスクールに通った。英語を毎日話す状況に追い込むにはまだ足りないと、オンライン型のスクールも受講した。
集中的な学習でTOEICのスコアは820点から1年半で925点までアップした。
英語力が急成長する過程で、外資系企業のマーケティング職のポストでヘッドハンティングの声が掛かるようになった。英語での採用面接に臨み、話せる英語力が付いてきたことを実感した。
以前に在籍した日系企業では30代半ばで700万円くらいだった年収が、1000万円近くまで大きくアップした。
先輩社員からぶつけられた言葉には心ない部分もあったが、今となっては転職してキャリアアップするきっかけとなるありがたいものだった。
来日した幹部の目に留まり
異例の抜てきで転属
対して社内で成り上がった者もいる。
外資系小売企業に勤務する40代男性は、英語を身に付けたことで、来日した外国人幹部の目に留まったのである。
それまで英語が不要な現場業務に従事していたが、一度、海外出張の機会を得た。そのときに通訳任せになったのを機に、学生時代以降触らずにきた英語を見つめ直した。
TOEIC535点からの学び直しを決意。NHKのラジオ英語講座で、中学生の基礎英語から始めた。
1年で50~100点を上げるペースでこつこつ学習を続け、2021年に800点台までになった。その途中、学び直しを始めて約3年がたった頃、腕試しをしようと外国人の幹部が来日するときに説明役を買って出た。
ここでのコミュニケーションで外国人の幹部から「面白いやつだな」と目をかけられ、転属しないかと誘われた。
それまでも現場からのアイデアなどをマネジメント層に英語で積極的に提案していた実績が評価され、海外拠点の外国人メンバーを横断的に集めた部署への転属が決まった。
アイデアをプレゼンするときは事前に準備する時間があるが、新たな部署で海外拠点のメンバーとリモート会議をするとなるとなかなか付いていけなかった。ゆっくりしゃべってもらいながら、リスニングとスピーキングをさらに訓練した。現場を知るバックグラウンドが、英語力の不足分を補い、時間的な猶予を与えてくれた。
ドメスティックな昇進・昇格の通常ルートとは異なり、異例の抜てきによりグローバルルートでマネジメント層のポジションに引き上げられたことで、働き方は変わった。
海外拠点のメンバーと同様に有給休暇の取得を含めて仕事の時間がコントロールしやすくなり、ワークライフバランスが劇的に向上したのである。転職すれば年収100万円アップが固いのは分かっているが、今はこの働き方が気に入っている。
英会話サービスを展開するレアジョブの法人向け事業子会社、プロゴスの安藤益代会長は、ビジネス英語において、日本人はスピーキング力に難があると指摘する。
次ページでは「TOEICスコア785点以上でも会議で話せない理由」、ダイヤモンド編集部が独自に実施した「800人アンケート」で判明した「英語力と年収の関係」「昇進・昇格で要求される英語力」「海外赴任で要求される英語力」のリアルをお伝えする。さらに学生時代にTOEICスコア500点台後半だった40代男性が英語で「ロスジェネの失われた10年」を取り戻した人生逆転劇もレポートする。彼はある英語スクールを利用することで、英語を武器にした。