「英語は学校で習ったきり。とても話せない……」と諦めるなかれ。日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)出身で元Jリーグチェアマンの村井満氏は、企業買収の局面をも「中学英語で乗り切った」という。特集『一度覚えたら忘れない英語勉強法』(全16回)#11では、村井氏が極意を伝授する。相手の英語が聞き取れないときにすべきこととは?(元Jリーグチェアマン 村井満 構成/梶原麻衣子)
買収先の社員700人を前に
「中学英語」で熱弁して大成功
海外での企業買収や、英語圏の方々の前での講演などの場面を、文字通りの「中学英語」で乗り切ってきました。そう言うと「またまた、ご謙遜を」と言われてしまうのですが、謙遜ではありません。
中学校の3年間で習う単語さえ、全て覚えているとは言い難いし、英文法もSVC、SVOだけ。私の5歳の孫が米国に留学していますが、英語の歌を歌っている動画を送ってもらっても、歌詞の意味はさっぱり分かりませんでした。その程度の英語力なのです。
それでも「伝わった」と感じられたのは、一つはリクルート時代に香港に本社のある人材紹介会社を買収したときのことです。700人の社員の前で、片言の英語で熱い思いを語りました。
それまでに海外赴任の経験はなく、語学力も「中学英語」レベル。ただ当時、欧米系の人材紹介の企業がアジアを席巻していた中、「アジアはアジア人で盛り上げるべきではないか」との熱意を、拙いながらも精いっぱい、英語で語ったのです。
こちらにはどうしても伝えたいことがある、となれば、その姿勢は言葉が完璧には通じなくても、確実に相手に伝わります。もちろん、法律など専門的な事項は別に担当者がいます。企業トップだった私に求められていたのが信頼感を伝えることだったのも大きかったでしょう。「目の前で話しているこの人物が信用に足るかどうか」を相手企業の社員たちは見ていたのです。結果は大成功でした。
また、私は2014年から22年までJリーグのチェアマンを務めましたが、19年に日本アジア協会から、Jリーグが入居するオフィスで会合を開きたいという依頼を受け、快諾しました。すると、「外国人の参加者も多いので村井さんに英語で講演をしてほしい」と言われたのです。
冷や汗をかきながら、なんとか1時間の講演と30分の質疑応答をこなしました。もちろんこれも「中学英語」で、流ちょうな人なら1分で話し終わる内容に10分かかるようなありさまでした。