本連載の第3回では、企業価値向上のために、ステークホルダーとの「対話(エンゲージメント)」が重要であることを紹介した。
中でも投資家とのエンゲージメントは貴重な接点であり、これを真剣勝負の場とするために、3つの心得が必要であることを提言した。
第4回は、日本企業にとって「脱炭素」への取り組みが最重要となっている背景を確認し、その活動を通じて「勝つ」ための勘所について、フロンティア・マネジメントの経験も交えて論じたい。
改めて、ESGに取り組むことがなぜ「勝つ」ことにつながるのかを確認しておくと、社会課題と企業経営を「同期化」することが、自社のリスクを低減し、機会を捉えるための準備になるからに他ならない。
「脱炭素」に取り組まない企業は
成長機会を得られないという現実
ESG経営に取り組むうえでは、自社だけではなく、ステークホルダーの観点からも、影響範囲が広く、経営への制約が大きくなる社会課題に注力しなければならない。
日本においても、菅政権時代に2050年までのカーボンニュートラル宣言が出され、東証プライム上場企業には、TCFD枠組みによる気候変動の及ぼす経営への影響開示が義務化された。(*)
日本企業が「脱炭素」に取り組むのは、必然の潮流といえる。逆に言えば、脱炭素に取り組まないことは、こうした社会環境の変化をよく理解しておらず、ステークホルダーへの責任を果たそうという意識もなく、結果として事業がリスクに晒され、機会を捉えることもできない企業なのだろう、という評価を甘受することに他ならない。