村上選手を取り巻くハッシュタグ
手のひら返しに至るまで

 WBC時の村上選手に関するハッシュタグには、好意的なものとそうでないもの、また、文脈や使い手によって「どちらとも取れるもの」があった。

 好意的なのはたとえば「#生き返れ村上」があった。これは、優秀な村上選手がよりにもよってWBCで不調に陥って苦しむさまを見たファンの、「復調して活躍してほしい!」という願いの込められたハッシュタグである。

 文脈によって意味合いが変化するものとしては「#村上と心中」が挙げられる。今回、逆転タイムリーを打つまではディスられまくった村上選手だが、彼を起用し続ける栗山英樹監督にも批判が集まっていた。「#村上と心中」は、栗山采配を受け入れた人にとっては己の覚悟を表明する言葉となり、栗山采配を否定したい人にとっては愚行の極みを表現する言葉として用いられることとなった。

 一方、どちらかというと好意的でないハッシュタグには「#村上マジ」というものがあった。これはどういう意味かというと、「村上は本当…」というニュアンスで、この「…」に入る言葉は「おのおのがフィットするものを思い浮かべて埋めてください」という構えである。「…」は、ファンの得も言われぬ激情を表してもいるので、ネガティブな言葉が入ることが想定されている。

 この「#村上マジ」に着目して、メキシコ戦でのTwitterの世論を追ってみたところ、以下のように変化していった。

●序盤
村上選手を擁護する声多数(半分ほどはこの印象)。「本人が一番苦しいはず」「信じて応援しよう」「問題ない。がんばれ」など。加えて、村上選手批判に対してたしなめる声や怒りの声なども。
●試合始まってやや経過時点
批判の割合が増加。批判に対して激怒している人も現れる。村上選手への恨みを募らせた執念深さから、ネガティブ勢がしぶとく残っていった。
●村上選手の最終打席前
「打ってくれ!」「頼む!」など、祈りの声が多くなり、批判の割合が薄まる。

 このあと、村上選手はご存じの通り歴史に残るサヨナラ逆転タイムリーを放ち、神となった。「#村上マジ」は文言そのまま、意味は正反対の、称賛のハッシュタグとなった。

 それまで村上選手をクソミソに言っていた人も、日本を勝利に導いた立役者となった村上選手を認めずにはいられない。これが「手のひら返し」である。

 なお「手のひら返し」に関しては「手のひら返しをしているさまが滑稽だ」「手のひら返しするのはいいけど、まずは悪く言っていたことを村上選手に謝るべきだ」などの声も聞かれるくらいであり、あまり良くは受け止められていないようである。

 そして筆者は、その手のひら返しをした人たちのツイートを追ってみることにした。