『週刊ダイヤモンド』4月1日号の第1特集は「部長・課長の残酷」です。「賃上げ」が今年の春闘の話題となる中、年収を上げる早道の一つは社内での出世。しかし、上場企業の平均年収は公開されているものの、部長・課長のリアルな待遇が世に出ることはほとんどありませんでした。さらに部長・課長に昇進しても、シニア社員には「役職定年」という悲劇が待ち受けます。そこで、ダイヤモンド編集部は主要企業の部長・課長の本当の給料や出世、役職定年事情を徹底調査。シニアの残酷な現実に迫ります。

「日本企業の部長の年収はタイより低い」
経産省の衝撃報告書よりも低い本当の実額

「日本企業の部長の年収は、タイよりも低い」――。そんな衝撃的な言葉が記されているのは、経済産業省が2022年5月に公表した報告書「未来人材ビジョン」だ。

部長の平均年収900万円、課長762万円…正社員の残酷ヒエラルキーの全貌写真はイメージです Photo:PIXTA

 報告書によれば、米国やシンガポールの部長の年収は約3000万円、タイは約2000万円に対し、日本の部長は1700万円程度にとどまる。さらに、日本は海外と比べて課長や部長に昇進する年齢も遅いとも指摘し、「雇用・人材育成システムの聖域なき見直しが求められている」などと報告書は提言している。

 ただし、経産省が報告書で示した部長の年収は、海外の調査会社のデータを参照したものだ。調査に協力した日本企業は、グローバル展開を進め、海外の給与相場に関心が高い大企業が中心である。

 実際の日本企業の部長の年収は、もっと低い。部長と課長の本当の年収は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(21年)」から導き出すことができる。