「いい会社」はどこにあるのか──? もちろん「万人にとっていい会社」など存在しない。だからこそ、本当にいい会社に出合うために必要なのは「自分なりの座標軸」である。そんな職場選びに悩む人のための決定版ガイド『「いい会社」はどこにある?』がついに発売された。20年以上にわたり「働く日本の生活者」の“生の声”を取材し、公開情報には出てこない「企業のほんとうの姿」を伝えてきた独立系ニュースサイトMyNewsJapan編集長・渡邉正裕氏の集大成とも言うべき一冊だ。同書のなかから厳選した本文を抜粋・再編集してお送りする。

なぜ三菱地所の50代は全員「年収2300万の部長以上」になれるのかPhoto: Adobe Stock

余剰を生み出すサラリーマン組織

 直近2回では、社員の平均年齢に着目しながら、日本企業に生まれているさまざまな「歪み」について語ってきた。

 ※参考記事:
 ・【10年後にはシニア社員だらけ…】「老化する日本企業」のヤバすぎる実態
 ・【電通、SB、NHK…】「仕事してるフリ」元管理職を量産する“役職定年制”のリアル

 なぜ、こういう事態になっているのか。組織は、社長を頂点とするピラミッド型になっている。どの会社にも社長がいて、業務の執行において最大の権限と責任を持つ。その下に、執行役員、事業部長(局長)、部長、課長、係長……と下に行くほど、人事や決裁できる金額の権限が小さくなっていく。組織の要諦は、人事とカネである。

 日本では新卒採用が中心で、名の知れた会社だと、全員が新卒ヒラ社員からスタートし、一部が途中で離職していく。離職者が抜けた分は、30代後半くらいまでは、中途採用で補充される。同期入社組は、係長、課長、部長と昇進していくが、全員がポストに就けるわけではない。上に行くほどポストの数は少なくなるからだ。

なぜ三菱地所の50代は全員「年収2300万の部長以上」になれるのか

 この、部下を持つポストをライン長(ライン職)と呼び、早くライン長ポストを駆け上がりたい人を指して「あの人はライン志向が強い」などとサラリーマン世界では表現される。

「ポストに就けない人」に対する処遇は?

 ライン職とは別に、専門職として同等の報酬で処遇する会社も増えてきた。たとえばPM(プロジェクトマネジメント)専門職、特定分野の熟練技術者として認定する高度技術専門職などだ。だが、やはりその役割にも限りがあるので、全員を高い報酬で処遇し続けることはできない。銀行なら支店長や本部の部長ポストが出世コースだし、メーカーの生産工場でも課長や工場長(部長)といったライン職が、高給で処遇される。

 これらのポストに就かない人はどうなるかというと、いわゆる窓際族となり、余剰人員として溜まり、会社から60歳定年を待たず早期退職してくれ、とお願いされる。だから、希望退職募集の対象は、概ね45歳以上ばかりだ。

 余剰人員は、有名なソニーの“追い出し部屋”(正式名称は『キャリアデザイン室』)のように、社内転職活動だけをする部署に異動となるケースもある。