ChatGPTのビジネスモデルとは?
ChatGPTを展開するAI研究所OpenAIは、「二面作戦」で言語AIを展開する戦略を取っている。
一つは、ユーザーへの直接提供で、サブスクで収益化する。OpenAIは利用者が増加する時間帯でも月額20ドルで常にChatGPTを利用できる有料サブスクリプションサービス「ChatGPT Plus」の提供を2月から開始している。
もう一つの展開方法は、APIを使って、外部からAIを使う手段の開放である。OpenAIは3月初旬、ChatGPTがAPIで利用可能になったと発表した。
注目すべきは、このAPIを活用して、それぞれの分野に対して調整されたAIを作るという活用方法だ。欧米圏の若者に人気の高いSnapchatを提供するSnap、富裕層が利用する買い物代行のアプリInstacart、誰でもECサイトを作れるEC基盤ソフトウエアのShopifyが、初期の採用企業に名を連ねた。これらのサービスでは、それぞれの事業ドメインに特化したChatGPT(の大本となるAI)が、ユーザーに対して提供される。ユーザーは使い慣れたアプリやサービスから、知らないうちにChatGPTを使えるようになるのだ。
言語AIの各種のドメインへの分化は、ChatGPTに限らず、さまざまな分野で進んでいる。これはある種のカンブリア期(生物の種類や数がこの時期に爆発的に増えた時期)の到来である。
この二つの展開の鍵になるのは、AIを安くできるかだ。現状、言語AIをつかさどるソフトウエアは作るのも、育てるのも、使うのも高価である。ChatGPTが行うLLMの展開方法では、1回の応答で数セントかかる、といわれている。AI研究所のOpenAIがChatGPTを実行するためのコンピューティングパワーのコストは、1日当たり10万ドルという試算もある。Alphabetの会長であるジョン・ヘネシーは、同社のチャットボット「Bard」のようなAIの応答は、通常のキーワード検索よりも10倍以上のコストがかかり得ると主張した。
しかし、OpenAIは、早くもこの「安いAI」を巡る競争に先鞭を付けている。OpenAIはChatGPTの大本となるGPT-3のシステム全体を最適化したことにより、「12月以降ChatGPTは90%のコスト削減を達成した」「価格は既存のソフトウエアよりも10倍安い」としている。12月初旬に公開したChatGPTのユーザー数が1億に膨れ上がる中で、ソフトウエアを軽量化する手法を編み出したということのようだ。
今のところ、言語AIを人々に布教する闘いではChatGPT陣営が大きく先行している。だが、Googleのような大手企業の他にも、北米では雨後のたけのこのように新興企業が生まれ、大型化している。
専門知識の伝播が超高速化したこのジャンルにおいて、十数年にわたるとみられるAI戦争はまだ始まったばかりだ。この戦争が終わったとき、我々の生活や経済活動は根本から変わっているのかもしれない。