ワーク・ライフ・バランスを重視するのもZ世代の特徴だといわれる。仕事だけに偏らず、家族や友人と過ごす生活面でも充実した人生を送りたい。そんな思いから、新卒で入社した財閥系企業を2年で退職。独立・起業してまで、なぜ、自身と顧客企業の「働き方を変える」仕事を選んだのか。我究館卒業生の山下勝さん(仮名)に、その心境を聞いた。
時間に縛られない仕事を突き詰めると……
――就活生に理想の働き方を尋ねると、仕事と生活を両立する「ワーク・ライフ・バランス」重視派が増えているそうですね。
藤本館長 確かに、そういう傾向はあるでしょうね。バブル期のようながむしゃらな働き方に憧れる学生は、まずいませんし。Z世代は、家族や友人との協調を重んじる人が多いのに加え、コロナ禍でリモートワークが普及した影響も、デジタルネイティブの彼らには大きいと思います。
今回紹介する山下勝さん(仮名)は、都内の大学を卒業後、ある財閥系メーカーに就職しましたが、およそ2年で退職。28歳で自ら会社を設立する道を選びました。何よりも時間を無駄に過ごすことが嫌だという山下さん。「時間の使い方は自分で決める」働き方ができる方法を模索した末の決断です。
IT導入サポート会社経営。大学卒業後、財閥系メーカーに就職し海外営業ほかを経験するが、「時間の使い方は自分で決める」働き方を追求し2年で退職。28歳で現在の会社を設立した。大学3年の時、ドイツ留学での現地大学生の学びへの姿勢と、我究館での自己分析に感銘を受けたことが独立・起業を考えるきっかけに。イラスト:ソノダナオミ
山下勝さん(仮名) 大企業で働いていて、社会の“常識”に疑問が湧いてきたんです。仕事を持つ人のほとんどが一律一斉に「週5日働く」社会は、本当に豊かといえるのか。多くの企業が、単純な“作業”のために働く人たちの大切な時間を無駄にしていないか。
そんな矢先にコロナ禍に見舞われ、希望していた海外勤務がなくなりました。在宅勤務が続く中で次第に閉塞感を感じ、このまま大企業で身動きが取れずに時間を浪費しているよりも、自分がこうだと考えたことで社会に貢献してみたい。悩んだ末、ならば、自分で会社をやろうと思ったのです。
――会社の設立経緯や業務内容などを教えてください。
山下 メーカーを退職後、結婚を機に地元に戻り、父が経営する業務用機器製造・販売会社に転職しました。社員10人程度の小さな会社です。そこでは、情報伝達がうまくいかない、帳票の作成に無駄な作業に時間がかかりすぎる、そんな非効率が多発していたのです。
そこで、経理業務や発注・在庫管理業務などにITを導入したところ、数カ月で業務改善効果が見られ始め、1年後にはそれが劇的に向上し、コスト削除効果も実感できました。すると、取引先や協力会社から、「ウチでもやって」とお声がけいただくようになったのです。
その後、地域の他の中小企業からも一定の需要が見込まれたため、父の会社から独立し、IT導入サポート会社を設立することにしました。2022年8月のことです。