当時はまだ入職2年目。ふるさと納税に関する専門的な知識は皆無だったが、成果を上げられる自信があった。入職1年目では、後に「ゆるキャラグランプリ」で1位に輝くご当地キャラ「しんじょう君」を誕生させ、SNSを駆使して6万人ものフォロワーの獲得に成功した。
キャラクターを活用したファンビジネスとふるさと納税で、相乗効果が生まれるのではないかという狙いもあった。「しんじょう君」の人気もあり、彼の提案を否定する声はなかった。
「受け付ける気がなかった」仕組みを改革し
地道な営業で返礼品を開拓
守時氏がふるさと納税業務を引き継いだ2014年度の須崎市の寄付額は、200万円ほどだった。当時の仕組みは、市の公式サイトで寄付を受け付け、はがきでの申し込みと引き換えに地元産品を返送するというもの。
決済方法も郵便振替もしくは現金書留に限られるなど、「受け付ける気がなかった」。そこで、まずはふるさと納税のプラットフォームの活用に乗り出した。決済についても、クレジットカードやコンビニ決済など幅広く処理できる手段を取り入れた。
仕組みの改善と並行して、返礼品集めにも奔走した。寄付する側からすれば最重要ともいえる返礼品だが、当時のラインアップは印象に残らない平凡なものばかり。全体の出品数もわずかだった。
「寄付のメインターゲットは都市部に住む人たち。須崎ならではのおいしい海の幸、山の幸を生かさない手はない」
自身が移住者でもあり、事業者とのネットワークはなかった。ネット検索や人づてに情報を得ながら一軒一軒声をかけて回ったが、事業者の反応は厳しかった。「関西弁を話す若者から、市役所の名を語る怪しい電話が来た」と、市役所宛てに詐欺を疑う連絡が入ったこともある。市政に対する不満を一方的にぶつけられ、何時間も足止めを食ったこともあった。それでも何度も足を運び、我慢強く説得を続けた。
「ふるさと納税は事業者にとっても町にとっても(損失を出す)リスクがないんですよ。まさにwin-win。未知のものへの抵抗感は当然なんですけど、それさえ払拭できれば得られるメリットは大きいんです。それを伝えたかったんですよね」
初年度は30~40件の事業者に声をかけ、泥臭い交渉を経てカツオやブリなどの海産物やかんきつ類、土佐包丁などの工芸品をメインに、大幅にラインアップを増やすことに成功した。