岸田首相がウクライナを訪れても
紛争の膠着状態は変わらない
ゆえに、ロシアは極東開発について、長い間日本の協力を望んできた。極東開発は中国だけではなく、日本の参加でバランスを取りたいのが本音なのだろう。
これに応えたのが、安倍晋三政権下で打ち出された、エネルギーや医療・保健、極東開発などの「経済協力プラン」だった(第147回)。
ロシアが日本のサハリンI・IIの権益維持を容認したのも、それが中国の手に渡れば、ロシアの極東地域全体が一挙にチャイナタウン化するリスクがあるからだと考えられる。
そのリスクを回避し、極東地域で中国とのバランスを何とか維持するために、日本の権益は守られたのだ。
現在、中ロは確かに接近しているが、ロシアが政治的・経済的苦境から脱するために中国に完全に依存することは、上記の理由から考えにくい(第300回)。
岸田首相がロシアを訪れるなど、何らかの形で「第3の道」を提案すれば、プーチン大統領が耳を傾ける可能性はあるのではないか。少なくとも、ウクライナに「戦勝祈願」のしゃもじを贈ることよりは、物事を前に進めるように思えてならない。
繰り返しになるが、岸田首相のウクライナ訪問は、紛争の膠着状況を何も変えるものではない。統一地方選を前にG7議長国としての責務を果たすことで、内閣支持率回復を試みたという「うがった見方」もできる。
本稿ではこのことを強調する目的で、あえて「第3の道」という大胆な説を提唱した。
もちろん、日本が米英から距離を置き、単独で行動するのは極めて難しい。それでも、人々の生命と安全を守ることが政治家の使命のはずだ。