大学生の健康情報リテラシー、85%が「問題あり」か「不十分」Photo:PIXTA

 コロナ禍で分かった健康リスクのひとつに、ヘルスリテラシー(HL)の低さがある。

 HLは、ちまたに溢れる健康情報から、科学的に適正なものを選択し、自分と周囲の健康を守る行動に結びつける能力だ。この3年間を通じ、医療従事者とその家族への偏見からワクチン不妊説、マスク不要論と、HLの低さが実害に結びついた例をあげれば切りがない。情報弱者はさておき、情報収集に長けた若者はどうだろうか。

 大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センターのグループは、2020年12月と21年10月に大阪市立大学、同府立大学に在学していた学生を対象に、HLと健康状態との関連を調べている。

 調査はスマートフォンによるウェブアンケート形式で行われた。設問は(1)HLの能力──健康情報へのアクセス、理解、評価、適用能力に関する自己評価、(2)運動習慣や喫煙、食事や睡眠といった健康問題の有無、(3)自分自身の健康状態に関する評価などから成る。

 最終的な回答者は1049人(男性623人、女性413人、無回答13人)で、平均年齢は19.8歳、学部1年生が63.5%を占めた。参加者の所属学部は人文・社会科学系、理学・医学系など8学部に分散していた。

 学生たちの情報源は、SNSを含むインターネットが過半数を占め、「友人、家族」「テレビ、ラジオ」がこれに続いた。

 調査の結果、回答者の85%がLHレベルに「問題あり」または「不十分」に該当。国際的にも低レベルで、特に情報を入手した後の「信ぴょう性の評価」と、情報を活用した「意思決定」の能力が低いことが判明している。

 データの文字は読めても「正しいか否か」「自分に当てはまるのか否か」の判断ができないのだ。

 一方で、健康的な生活や良い人間関係に気を配る学生ほど、HLが高く、健康に関する自己評価が高いことも示された。

 SARS-CoV-2との共存が決定的になった今、局所流行に遭遇しても冷静かつ臨機応変に対処できる能力が健康と人生を守る。

 親の庇護を離れる大学生こそ、なんとかHLを上げていきたい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)