発症しやすい人の
二つの特徴とは

 過去に水ぼうそうを経験した人なら、誰しも発症のリスクを抱えている帯状疱疹。発症しやすい人には2つの特徴がある、と渡辺氏は話す。

「1つは『50歳以上の人』です。体内に潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルスは、隙あらば再活性化して帯状疱疹を発症させようとしますが、若い人は免疫力が高く、メモリーT細胞という細胞がウイルスの再活性化を素早く検知して未然に防ぎます。しかし、加齢とともに免疫力は衰えていくので、再活性化を防ぎにくくなるのです。そのため、50歳を超えてからは帯状疱疹の発症率が高くなります。約3人に1人が80歳になるまでに帯状疱疹を発症するという調査結果(**)もありますね」

(**)…Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017」

 30代、40代の人が帯状疱疹にかかっても軽症ですむケースが多く、年を重ねるほどに重症化する傾向もあるという。

 そして二つ目の特徴は「免疫力が低下している人」だ。

「年齢にかかわらず、疲労や睡眠不足、ストレスなどの負担は免疫力の低下を招き、帯状疱疹の発症リスクが上がります。また、骨髄移植や臓器移植後の患者さん、白血病、悪性リンパ腫といった血液のがん、糖尿病など免疫力が低下する基礎疾患がある人も、帯状疱疹を発症する可能性があります」

 帯状疱疹は、年齢と免疫力に深く関わる疾患なのだ。一度発症すると再び「水痘・帯状疱疹ウイルス」の免疫ができるため再発しにくい、という特徴もあるが、約6%(**)の人は再発を経験しているとの調査結果も存在するため、油断はできない。

(**)…Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017

 実際に帯状疱疹を罹患した場合は、症状が現れてから3日以内に皮膚科を受診してほしい、と渡辺氏。

「発疹が出る部位によっては、危険な合併症を招く可能性があります。たとえば、顔、とくに目の周りに発疹が出た場合は、角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎といった目の疾患を招き、視力低下や失明につながる恐れがあるのです。そのほか、顔面神経まひや“耳の帯状疱疹”を特徴とする合併症『ラムゼイハント症候群』を発症すると、めまい、耳鳴り、難聴に悩まされ、生活に支障をきたします」

 自然に治癒するケースもあるが、治療の遅れはこれらの合併症の発症やPHNに移行する可能性も高まる。さまざまなリスクを下げるためにも、早期治療が望ましいという。

「医療機関では、ウイルスの再活性化を抑える抗ウイルス薬や、痛み止めを処方して痛みを和らげる投薬治療を行います。重症の場合は、入院して点滴をすることもありますね。発疹が治まったあとにPHNになってしまった場合は、痛み止めを処方するなど、症状に適した治療が受けられます」