シリーズ「オペマネの思考法」の第1回では、お茶のサプライチェーンの例を用いて、事業プロセスから戦略を組み立てるというオペマネの思考法を紹介した。トップダウンで、降ってわいたような戦略を、現場が事業プロセスに無理やりに落とし込むというような勘違いのリーダーシップの真逆と理解していただきたい。

 今回は戦略立案の有効な手段として使われるSWOT分析の落とし穴を指摘し、オペマネの思考法である「問題解決」からの切り口を考える。SWOT分析を用いて、現状維持を正当化して、問題解決に取り組まない日本の製造業がとるべき思考法を提案する。 

問題解決の障害となる
SWOT分析の落とし穴

 事業戦略立案におけるSWOT分析は、事業部の強み(Strength)と弱み(Weakness)を列挙した上で、事業部にとっての機会 (Opportunity)と脅威(Threat)を列挙し、この4つの項目すべてをまな板の上に乗せてから、戦略を立案するという至極まっとうな試みである。

 SWOT分析の誤用は、S(強み)とO(機会)の組み合わせが強調されて、W(弱み)とT(脅威)が示す問題点に本格的な対応がされないということにある。日本の技術力とものづくりの強みを生かして、日本の製造業を再活性させようというあの掛け声である。日本の製造業が直面する問題解決の障害となっている。

 自分の土俵で戦うことができれば勝てるが、お客さんは相撲を見に来なくなって、相手力士も自分の土俵に上がって来なくなるという寂しい現実になっている。

日本のものづくりの強みは
擦り合わせの能力か

 筆者は1984年にオペマネの研究で、MITから博士号を取得したが、その頃の米国産業界にとっての最大の脅威は、高品質で低価格の日本製品の市場浸透であった。筆者の卒業直後、日本の製造業に対抗するために、MITでは、米国の主要製造業数社の多額の寄付で、マニュファクチャリング・リーダーズ・プログラムという大学院レベルの研究・教育プログラムが開始された。