「中小企業6割が賃上げ」に反映された声は実態と乖離?

 日本に中小企業がどれだけあるのかということは実は正確にはよくわかっていないが、独立行政法人中小企業基盤整備機構によれば、中小企業357万8176社だという。

 では、「中小企業の6割が賃上げ予定」という調査結果を世に公表した日本商工会議所には、この中のどれほどの中小企業をカバーしているのか。ホームページによれば、全国の商工会議所の会員数は123万(22年4月現在)で、しかもこの数には大企業も含まれる。つまり、日本商工会議所(以下、日商)には全中小企業の3割程度しか加盟していないのである。

 そんな少数派の中でわずか3000社程度のアンケートをピックアップしただけで、さも「中小企業全体」が賃上げをしようとしている、と触れ回るのはやや乱暴な気がしないだろうか。

 また、問題は調査対象の数だけではない。

 商工会議所に参加している企業経営者というのは基本的に、中小企業振興・地域振興や情報交換など積極的だ。交流会やセミナーもよく催されており、そういうものに参加する人が多い。つまり、「意識高い系経営者」なのだ。こういう人たちが集まった団体で、アンケートを取れば当然、多くの人が「賃上げ予定」と答える。日本の賃金が異常に低く、多くの労働者が苦しんでいるという問題意識があるからだ。

 しかし、商工会議所に加わらない、残り234万社の経営者に同じことを聞いたらどうだろうか。筆者は商工会議所の会員と比べるとかなり賃上げへの意欲は薄れるのではないかと考えている。