中国の銀行は、米国や欧州でなお続く銀行危機に引きずり込まれることはないだろう。だが、最善の投資先とは言えないかもしれない。低成長と利益率の低下――不良債権の過少計上に対する根強い懸念とともに――により、中国の銀行株は安全な逃避先というよりも、むしろバリュートラップ(割安株がずっと割安な状態にあること)となっている。中国は厳しい統制下にある金融システムのおかげで、シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの投げ売りの影響から比較的安全だと言える。モルガン・スタンレーによると、昨年の中国の銀行資産に占める外国資産の割合は約2%で、そのほとんどは融資だった。銀行が破綻した際の損失を補填(ほてん)するために使用できるAT1債(その他ティア1債)は、中国の銀行の資本基盤の約1割を占める。だが、その大半は中国国内で発行されたものだ(モルガン・スタンレー調べ)。そのため、クレディ・スイスがライバルのUBSに買収され、クレディ・スイスが発行した170億ドルのAT1債の価値が消失したことを受けた世界的な急落の影響も受けにくくなっている。