中国系店舗も地域との関係を重視

 一帯には、“中国資本”も流入するようにもなった。

 西成警察署から車で3分ほどの浪速区大国町に、2021年末、中国第一汽車の高級自動車ブランド「紅旗」の旗艦店がオープンした。毛沢東が乗ったといわれる中国の国産車だが、1000万円を超える中国の高級自動車を扱う旗艦店が大国町にできたことは、一部の地元民からも注目された。

 日本の第一号店を大阪に設けたのは「中国でもハイエンドモデルができるという宣伝戦略」(中国メディア)であり、また「輸入元が関西にあるため」(日本メディア)とも言われる一方で、中国事情についてよく知る地元の男性は、こうした動向について次のような解釈を与えている。

「西成区と接するこの一帯も、地元の人からすれば『ややこしい地域』ですが、そんなところに高級車を売る外国資本が参入してきたことは、中国企業にとって過去の評判やイメージなどまるで関係ないことを意味しているのです」

 前回、当コラムでは「2010年前後に萩之茶屋の商店街の空き店舗を中国資本が買収した」という話をお伝えした。

 その後、瞬く間に数を増やした中国系カラオケ居酒屋は、「危険地帯にできた怪しげな店舗群」として、2015年頃に大手メディアなどでたびたび取り上げられてきた。萩之茶屋一帯に中国系カラオケ居酒屋ができた当初は、客引きや大音量のカラオケ、ゴミの不始末などの諸問題が増え、これまで以上に輪をかけた無秩序化が進んだ。しかし、約10年がたった今は、これも昔話になりつつある。

 ゴミ問題については「依然として、路地裏に不法投棄をするケースもある」という地元の声もあるが、筆者がこの商店街を歩いたときには、目をそむけたくなるような光景や客引き、大音量のカラオケは特に気にならなかった。